高齢者が洋服を噛むのはなぜ?原因5つと今日からできる対応

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こんな疑問を持つ方へ

  • 母が袖口をくわえて離さない。どうしてなのか分からない
  • やめさせようとすると余計に強く噛んでしまう
  • 繊維を飲み込んでいないか心配だ
  • 認知症が進んでしまったサインなのだろうか
  • 病院に行くべきか、様子を見ていいのか判断できない

高齢者が洋服を噛む行動は、家族も介護職も戸惑う場面のひとつです。ただ、この行動には必ず何らかの理由があり、理由が違えば有効な対応も変わります。原因の見分け方から、今日から試せる具体策、避けたい対応までを順に整理します。

高齢者が洋服を噛むのはなぜ?考えられる5つの原因

高齢者が洋服を噛む5つの原因を解説したイメージ

まず押さえておきたいのは、洋服を噛む行動は「困らせるためにやっていること」ではないという点です。介護の現場では、こうした行動は認知症の行動・心理症状(BPSD)として理解されるようになり、以前のように「問題行動」と呼ばれることは少なくなりました。本人にはその行動をとる理由があり、自分では止められない状態にあります。

原因は大きく5つの系統に分けられます。全体像を先に確認しておきましょう。

原因の系統 よくある背景 見分けのヒント
口の中の不快感 義歯が合わない、歯や歯ぐきの痛み、口の乾き 食事中や食後に強く出る。口臭や食べこぼしの変化を伴う
不安・退屈 手持ちぶさた、環境の変化、寂しさ 一人になったとき、夕方、就寝前に増える
認知症の症状 口唇傾向、常同行動、異食 時間帯を問わず繰り返される。他の反復行動も併存
反射・不随意運動 咬反射、口まわりのジスキネジア 本人に自覚がない。触れると反射的に噛みしめる
空腹・のどの渇き 食事のリズムのずれ、脱水傾向 食事の前や水分摂取が少ない日に目立つ

1. 口の中に不快感やトラブルがある

最初に疑いたいのが口腔内の問題です。合わない入れ歯が歯ぐきに当たる、虫歯や歯周病で痛みがある、口の中が乾いてねばつく。こうした不快感を言葉で伝えられないとき、布を噛むという行為で紛らわせようとすることがあります。柔らかい布を噛むと圧が分散され、一時的に痛みが和らぐためです。

高齢になると唾液の分泌が減りやすく、内服薬の影響で口が乾く方も少なくありません。乾いた口の中に布を含むと湿り気が得られるため、「口の渇きへの自己流の対処」として噛んでいるケースもあります。

2. 不安や退屈をやわらげる「自己刺激」になっている

口は、人が最も早い時期から使う感覚器官です。強い不安を感じたときや、やることがなく手持ちぶさたなときに、口や手を動かすことで気持ちを落ち着けようとする働きが出ることがあります。爪を噛む、髪を触るといった行動と同じ系統のものと考えると理解しやすいでしょう。

入院や入所、部屋替え、家族の帰宅後など、環境が変わったタイミングで急に始まった場合は、この背景を強く疑います。噛むこと自体が本人にとっては「落ち着くための手段」になっているため、単純に取り上げるだけでは解決しません。

3. 認知症の症状としてあらわれている

認知症の種類によっては、口に物を入れる傾向そのものが症状として位置づけられています。とくに前頭側頭型認知症では、診断の項目に「固執・常同性(同じ動作の反復や儀式的な行動)」と「口唇傾向と食習慣の変化(口唇的探求または異食症)」が含まれており、なんでも口に入れてしまう行動が特徴のひとつとされています。この場合、洋服を噛むのは単独の困りごとではなく、同じ道を歩き回る、同じ言葉を繰り返すといった他の反復行動と一緒にあらわれることが多くなります。

また、認知機能の低下によって物の見分けがつきにくくなり、布を食べ物と誤って認識してしまう「異食」の一形態として起きる場合もあります。認知症では味覚や嗅覚も低下しやすいため、口に入れた時点では食べ物でないと気づけないことがあります。

ワンポイント

厚生労働省が公表した将来推計(九州大学・二宮利治教授らの研究をもとに作成)によると、65歳以上の認知症の人は2022年時点で443.2万人、有病率は12.3%でした。軽度認知障害(MCI)を含めると同時点で約28%にのぼります。洋服を噛む行動に悩む家庭は、決して例外的な存在ではありません。

4. 反射や不随意運動が関係している

見落とされやすいのが、本人の意思とは無関係に起きている動きです。

ひとつは咬反射です。口の中に物が触れると反射的に噛みしめてしまうもので、脳血管障害の後遺症などにともなって高齢者にあらわれることがあります。口腔ケアを妨げる要因としても知られており、歯ブラシを入れると強く噛んでしまい離さない、といった形で現れます。この場合、本人は「噛もう」と思って噛んでいるわけではありません。

もうひとつが薬剤による口まわりの不随意運動です。抗精神病薬などのドパミン受容体遮断作用をもつ薬を2〜3か月以上使用することで起こる遅発性ジスキネジアでは、口をもぐもぐさせる、舌なめずりをする、口唇をすぼめるといった動きが典型的に見られます。抗精神病薬を服用している人のおよそ25%に生じるとされ、高齢であること、女性であること、投与量が多いこと、投与期間が長いこと、抗コリン薬の併用などが危険因子として挙げられています。睡眠中には出ず、起きている間に出るのが特徴です。なお、薬を飲んでいない高齢者でも、加齢にともなって口もとの不随意運動が見られることがあります。

自己判断で薬を減らさないでください

不随意運動が疑われても、服薬中の薬を家族の判断で中止・減量すると、もとの症状が再燃・悪化するおそれがあります。突然の中断がかえって症状を悪化させることもあるため、必ず処方した医師に相談してください。

5. 空腹やのどの渇きを伝えられていない

認知症では満腹や空腹を感じる働きが障害されることがあり、食事の直後でも空腹を訴えたり、逆に空腹を言葉にできないまま手近な物を口に入れたりします。食事の前の時間帯に集中して噛んでいる、水分をあまり摂れていない日に増える、といった傾向があれば、生理的な欲求のサインとして読み取れます。

洋服を噛む行動を放置すると起きる3つのリスク

洋服を噛む行動を放置した場合の3つのリスク

「布を噛むくらいなら」と考えたくなりますが、いくつか無視できないリスクがあります。危険度を把握したうえで、優先順位をつけて対応しましょう。

誤嚥と窒息のリスク

噛み続けた布は、繊維がほぐれてちぎれます。ほぐれた綿やポリエステルの繊維、ボタン、装飾のビーズなどを飲み込めば、のどに詰まる可能性があります。認知症のある方は、口に入れたあとに「これは危険だ」と判断して吐き出すことが難しく、気道閉塞につながる恐れがあるとされています。

消費者庁がまとめたデータでは、2023年に「不慮の窒息」で亡くなった65歳以上の高齢者は7,779人で、このうち食物の誤嚥によるものは4,215人でした。裏を返せば、残る3,000人以上は食物以外を含む窒息だったことになります。布や紙は「食べ物ではないから安全」ではありません。

口や歯へのダメージ

強く噛み続ければ、歯や差し歯、ブリッジに負担がかかります。口角に布が当たり続けて皮膚がただれる、唾液で常に濡れた状態が続いて口まわりが荒れるといったトラブルも起きます。また、口腔ケアがしにくくなることで口の中が不潔になり、誤嚥性肺炎のリスクを高める悪循環にもつながります。

衣類の傷みと、本人の尊厳

襟や袖が伸びてよだれで湿った服は、見た目にも清潔感を損ないます。外出や来客の場面で家族が引け目を感じ、外に連れ出さなくなる。その結果、刺激が減ってさらに噛む行動が増える。このような循環は現場でしばしば見られます。衣類の問題は単なる経済的損失ではなく、本人の社会参加にも関わる課題です。

原因を見分けるコツ|まず1週間、5つの項目を記録する

洋服を噛む原因を見分けるための1週間の記録方法

対応を考える前に、必要なのは観察です。原因が違えば有効な手立ても変わるため、思いつく対策を次々に試すよりも、まず記録をとるほうが近道になります。難しい記録は必要ありません。カレンダーの余白やスマートフォンのメモで十分です。

記録する項目 具体例 読み取れること
いつ 朝食後、夕方、就寝前、一人のとき 夕方に集中するなら不安、食後なら口腔内を疑う
どこを 袖口、襟元、胸元、タオル、寝具 いつも同じ場所なら常同的な習慣化の可能性
どんなふうに 強く噛みしめる、しゃぶる、ちぎる ちぎって飲み込む動作があれば危険度が高い
どのくらい 数分か、声をかけるまで続くか 止まらない場合は反射性の要因も考える
直前に何が 誰かが帰った、テレビの音が大きい、暑い 引き金になっている環境要因が特定できる

ワンポイント

この記録は、かかりつけ医や歯科医師、ケアマネジャーに相談する際そのまま資料になります。「最近よく噛むんです」と伝えるより、「夕方16時ごろから右袖を強く噛み、20分ほど続きます」と伝えるほうが、専門職は原因にたどり着きやすくなります。

今日からできる対応7つ|叱らずに減らしていく手順

高齢者が洋服を噛むときに今日からできる7つの対応

1. まず口の中を見る

いちばん初めにすべきことは、口腔内の確認です。入れ歯が当たっていないか、歯ぐきが赤く腫れていないか、舌が乾いていないか。素人目でも「いつもと違う」は分かります。異常があれば歯科の受診を検討します。通院が難しい場合は、訪問歯科診療という選択肢があります。

口の乾きが原因なら、こまめな水分摂取、保湿ジェルの使用、部屋の加湿といった対応で改善することがあります。

2. 手と口に、別の役割をつくる

噛む行動を「取り上げる」のではなく「置き換える」発想が有効です。手が空いていると口に物が行きやすいため、手を使う活動を用意します。タオルたたみ、豆の選り分け、洗濯物の仕分け、握る感触のよいクッションなど、本人が長年やってきた作業に近いものほど自然に受け入れられます。

口については、飴やガムを安易にすすめるのは危険です。嚥下機能が落ちている方では、それ自体が窒息の原因になります。導入前に必ず、かかりつけ医や言語聴覚士に嚥下の状態を確認してもらってください。

3. 環境の刺激を整える

テレビの音量が大きすぎる、照明がまぶしい、人の出入りが多い。こうした過剰な刺激は落ち着きのなさを招きます。逆に、何もない静かすぎる部屋も退屈から自己刺激を強めます。「ほどよく穏やか」を目指し、なじみのある家具や写真を置くと安心感につながります。

あわせて、ティッシュや小さな布類など、紛らわしいものを手の届く範囲に置かない工夫も有効です。ふわふわした素材や一口サイズのものは、食べ物と誤認されやすい代表格とされています。

4. 日中の活動量と生活リズムを見直す

日中に体を動かす機会が少ないと、夕方以降に落ち着かなくなる傾向があります。散歩、デイサービスの利用、日光を浴びる時間の確保など、生活リズムそのものを整えることが、結果的に噛む行動の減少につながることは少なくありません。

5. 水分と食事のタイミングを調整する

食事の前に集中して噛むなら、食事時間を少し早める、間に軽い補食を挟むといった調整を試します。水分は一度に多く飲ませるより、少量をこまめに、が基本です。飲み込みに不安がある場合は、とろみ剤の使用について専門職に相談してください。

6. 衣類そのものを工夫する

行動をすぐには変えられなくても、被害と危険を減らすことはできます。

工夫の方向 具体例 ねらい
形を変える 袖の短いもの、襟のないもの、前開きでないもの 噛みやすい部位を物理的に減らす
素材を選ぶ ほつれにくい織り、毛羽立ちの少ない生地 繊維の脱落と誤飲を防ぐ
装飾を外す ビーズ、飾りボタン、ワッペンを避ける 小さな部品の窒息リスクを下げる
洗い替えを増やす 同じ服を複数枚そろえる 湿った服の着用時間を減らし皮膚を守る

7. 声かけと関わり方を変える

「やめて」と制止するだけでは、多くの場合うまくいきません。本人には理由があり、止められない状態だからです。制止のかわりに、別の話題に誘う、手を取って一緒に何かをする、飲み物をすすめるといった形で、自然に注意をそらすほうが効果的です。

叱責は不安を増やし、不安はさらに噛む行動を強めます。介護する側が穏やかに接することで本人も落ち着き、症状がやわらぐことがあると指摘されています。

やってはいけない対応|身体拘束との境界線を知る

洋服を噛む高齢者への避けたい対応と身体拘束の境界線

力ずくで口を開けさせない

噛んで離さないとき、無理にこじ開けようとするのは危険です。虫歯や歯周病で弱った歯、差し歯やブリッジが折れたり抜けたりすることがあります。まずは額や頬など口以外をマッサージし、噛みしめる際に力の入る咬筋をほぐしてから、唇がゆるんだところで下あごを軽く押し下げるという順序が現場では推奨されています。

咬反射がある方への専門的な対応としては、歯ぐきに触圧刺激を加えるガム・ラビングという方法が知られています。脳血管障害の後遺症で咬反射があらわれた高齢者8名に対し、ガム・ラビングと口腔ケアを5週間継続した研究では、全例で咬反射の持続時間が短くなった一方、完全に消えた人はいませんでした。効果が出るまでに少なくとも4週間程度の継続が必要と示唆されており、この研究では歯垢の付着率が平均61%から34%まで改善しています。ただし手技には作法があり、口の中が過敏な状態では行わないなどの注意点があるため、歯科医師・歯科衛生士・言語聴覚士の指導を受けたうえで実施してください。

ミトンやつなぎ服は「身体拘束」にあたる

噛むのを防ぐためにミトン型の手袋をつける、脱衣を防ぐためにつなぎ服を着せる。こうした対応は、厚生労働省が示す身体拘束の具体例に含まれています。介護保険制度上、身体拘束は原則として禁止されており、例外的に認められるのは次の3要件をすべて満たす「緊急やむを得ない場合」に限られます。

要件 内容
切迫性 本人または他の利用者の生命・身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと
非代替性 身体拘束以外に代わる介護方法がないこと
一時性 身体拘束が一時的なものであること

3要件を満たす場合でも、施設では態様・時間・その際の心身の状況・やむを得ない理由を記録することが義務づけられています。「心配だから」「手が足りないから」という理由だけでは要件を満たしません。

在宅介護には施設と同じ運営基準が直接適用されるわけではありませんが、厚生労働省の手引きでは在宅介護や家族への啓発を含めて拘束の廃止・防止が強調されています。家庭であっても、まず環境や関わり方の工夫を尽くすという順序は変わりません。

施設で提案を受けたときは

施設側からミトンやつなぎ服の使用を提案された場合は、「3要件のどれに該当すると判断したのか」「代わりに試した方法は何か」「いつまで続ける予定か」を確認しましょう。適切な施設であれば、これらの説明と記録を用意しています。

受診・相談の目安|どこに相談すればよいか

高齢者が洋服を噛む場合の受診と相談先の目安

早めに相談したいサイン

  • 布をちぎって飲み込む動作が見られる
  • 数週間のうちに急に始まった、または急激に増えた
  • 口を開けたがらない、食事量が落ちた、口臭が強くなった
  • 口や舌が本人の意思と無関係に動いているように見える
  • 洋服以外にも、ティッシュや紙、小物を口に入れるようになった
  • 食後にむせる、声がガラガラする、発熱を繰り返す

相談先の使い分け

相談先 向いている相談内容
歯科・訪問歯科 義歯の調整、歯や歯ぐきの痛み、口腔ケアの方法、咬反射への対応
かかりつけ医 全身状態、服薬内容の確認、不随意運動が疑われる場合の相談
もの忘れ外来・認知症疾患医療センター 認知症の診断、症状の変化、専門的な治療方針
地域包括支援センター 介護保険の申請、サービスの検討、家族の負担相談。全国に設置されている総合相談窓口
ケアマネジャー ケアプランの見直し、デイサービスや訪問サービスの調整

どこに相談してよいか分からないときは、市区町村の介護保険担当窓口に問い合わせるか、自治体のホームページから地域包括支援センターを探すのが確実です。名称は地域によって異なりますが、窓口で「利用できる地域包括支援センターを教えてほしい」と伝えれば案内を受けられます。

介護する人が抱え込まないために

介護する人が悩みを抱え込まず支援を利用するイメージ

洋服を噛む行動は、目に見えて分かりやすく、そして毎日続きます。「またやっている」という気持ちが積もり、つい強い口調になってしまう。その後で自分を責める。この繰り返しに疲れてしまう方は少なくありません。

ここで思い出したいのは、この行動は本人にも止められないという事実です。制御できないものを制御しようとすれば、介護する側が消耗するのは当然のことです。改善しないことは、介護の失敗ではありません。

できることは3つあります。ひとつは、危険度の高いもの(飲み込む動作、装飾のある衣類)から優先的に手を打つこと。ふたつめは、記録を専門職に渡して判断を分担すること。そして3つめは、デイサービスやショートステイを使い、噛む場面を見続ける時間そのものを減らすことです。距離を取ることは、投げ出すことではありません。

よくある質問

Q1. 洋服を噛むのは認知症のサインですか

認知症の症状としてあらわれることはありますが、それだけで認知症と判断することはできません。合わない入れ歯や歯の痛み、口の乾き、薬による不随意運動など、認知症以外の原因も十分に考えられます。ほかにも記憶の低下や見当識の変化など気になる点があるなら、もの忘れ外来や認知症疾患医療センターへの相談を検討してください。

Q2. 噛むのをやめさせるために叱ってもよいですか

叱責はおすすめできません。本人は理由があって噛んでおり、多くの場合は自分で止められない状態にあります。叱られると不安が増し、その不安がさらに行動を強めるという悪循環になりがちです。制止するより、別の活動に誘って自然に注意をそらす方法が現実的です。

Q3. 噛んでもよい専用のグッズはありますか

障害のある方の分野では、噛むことを目的とした専用の器具が使われる場合があります。ただし高齢者向けに広く確立された製品は限られており、破損して破片を飲み込む、素材が合わないといったリスクもあります。導入を考える場合は、必ず歯科医師や言語聴覚士など、その方の口腔・嚥下の状態を把握している専門職に相談してください。市販品を自己判断で与えるのは避けたほうが安全です。

Q4. 服の繊維を飲み込んでしまったようです。どうすればよいですか

むせ込み、呼吸の苦しさ、顔色の変化、声が出ないといった症状があれば、ためらわず救急要請してください。とくに詰まった状態では、数分の判断が結果を左右します。症状がなくても、飲み込んだ量が多い、大きな布片やボタンなどの可能性がある場合は、医療機関に連絡して指示を仰いでください。なお、何を飲み込んだかによって適切な対応は変わるため、自己判断で吐かせたり水を飲ませたりするのは避け、まず専門機関に確認するのが安全です。

Q5. 施設ではどのように対応しているのですか

多くの施設では、まず口腔内の状態を確認し、記録から行動が出やすい時間帯や引き金を探ります。そのうえで日中の活動を増やす、居室の環境を整える、衣類を変えるといった対応を積み重ねます。歯科や医師と連携し、義歯の調整や服薬の見直しを検討することもあります。ミトンやつなぎ服といった手段は身体拘束にあたるため、他の方法を尽くしたうえで、要件を満たす場合に限って慎重に検討されます。

まとめ

  • 高齢者が洋服を噛む背景には、口腔内の不快感、不安や退屈、認知症の症状、咬反射や薬による不随意運動、空腹やのどの渇きという5つの系統がある
  • ちぎって飲み込む動作があるときは危険度が高い。2023年に不慮の窒息で亡くなった65歳以上は7,779人にのぼり、布や紙も窒息の原因になり得る
  • 対応の前に、いつ・どこを・どんなふうに・どのくらい・直前に何があったかを1週間記録する。これが専門職への最良の相談材料になる
  • まず口の中を確認し、手を使う活動を用意し、環境と生活リズムを整える。衣類は形・素材・装飾を見直して危険を減らす
  • 無理に口をこじ開けるのは歯の破損につながる。ミトンやつなぎ服は身体拘束にあたり、切迫性・非代替性・一時性の3要件をすべて満たす場合に限られる
  • 急に始まった、口を開けたがらない、食後にむせるといったサインがあれば、歯科・かかりつけ医・地域包括支援センターへ早めに相談する
  • 改善しないことは介護の失敗ではない。危険度の高いものから手を打ち、判断を専門職と分担し、サービスを使って距離を取ることも大切な対応である

本記事は、厚生労働省、消費者庁、難病情報センターなどの公的機関が公表する情報および専門機関の資料をもとに構成しています。個々の状態によって適切な対応は異なります。診断や治療、服薬に関する判断は、必ず医師・歯科医師などの専門職にご相談ください。

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