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高齢者の電話の切り忘れは、単なるうっかりでは片づけられません。受話器が外れたままだと、家族の連絡も緊急通報も届かなくなります。原因と防ぎ方、つながらないときの動き方を整理しました。
こんな疑問を持つ方へ
- 実家に電話しても、何時間も話し中のままで不安になる
- 親がスマホの通話を切り忘れて、高い請求が届いた
- 受話器が外れたままだと、料金はかかるのか知りたい
- 何度言っても直らない。認知症のサインなのか気になる
- 電話に頼らない見守りの方法を考えたい
高齢者の電話の切り忘れが起きる3つのパターンと背景
ひとくちに切り忘れといっても、起きている現象は同じではありません。原因が違えば対策も変わるため、まずはどのパターンに当てはまるかを見極めることが出発点になります。
パターン1:固定電話で受話器を戻し忘れる
もっとも多いのが、通話を終えたあとに受話器を本体に正しく戻せていないケースです。受話器が斜めに置かれてフックが押されていない、コードに引っかかって浮いている、掃除中に落ちて気づかない、といった状況で起こります。
この状態は「オフフック」と呼ばれ、回線はふさがったままです。外から電話をかけても話し中の音になり、着信音は鳴りません。本人は電話が終わったつもりでいるため、異常に気づく手がかりがないのが厄介な点です。
パターン2:スマートフォンで通話終了ボタンを押し忘れる
スマートフォンは、画面上の赤い受話器マークを押すまで通話が続きます。ホームボタンや戻る操作で通話画面が消えても、通話そのものは終わっていません。画面が暗くなったことを「切れた」と受け取ってしまうと、双方が切り忘れた場合に通話がつながったままになります。
国民生活センターが2018年9月13日に公表した資料では、70歳代の男性が5分ほどの通話のつもりが約8時間の通話時間になり、いつもは3,000円ほどの請求が2万円を超えたという相談事例が紹介されています。携帯電話に関する相談は年間2万件以上寄せられ、契約当事者が60歳以上の件数は2013年度の3,947件から2017年度には7,399件へと増加していました。
パターン3:コードレス子機を充電台に戻さない
見落とされがちなのが、子機の置き場所です。通話後に子機をテーブルや布団のそばに置いたままにすると、充電されずに電池が消耗します。電池が切れれば着信音は鳴らず、家族から見れば「呼び出し音は鳴るのに出ない」という状態になります。
また、機種によっては子機を充電台から取り上げるだけで着信に応答する設定(オフフック応答)が有効になっていることがあります。この設定のまま子機を持ち上げてしまうと、意図せず通話状態に入ることもあります。
「うっかり」で片づけられない加齢と認知機能の変化
切り忘れの背景には、加齢に伴う複数の変化が重なっています。手元の小さな文字が読みにくい、聞こえづらくて会話に集中し疲れてしまう、複数の手順を最後まで保持しにくい、といった要因です。
2024年12月に策定された認知症施策推進基本計画では、2022年時点で認知症の高齢者が約443万人、軽度認知障害(MCI・認知症の前段階とされる状態)が約559万人と推計され、合計で1,000万人を超え、高齢者の約3.6人に1人にあたるとされています。切り忘れが起きること自体は誰にでもありますが、頻度が増えている場合は、加齢の一言では説明しきれない変化が背景にある可能性も視野に入れておきたいところです。
ワンポイント
本人を責めても再発は防げません。「覚えてもらう」のではなく「忘れても困らない仕組みにする」という発想に切り替えると、対策の選択肢が一気に広がります。
切り忘れたままだと何が起きる?見過ごせない3つのリスク
切り忘れの被害というと通話料を思い浮かべがちですが、介護の視点では料金よりも深刻な問題が先に来ます。
| リスク | 何が起きるか | 深刻度の目安 |
|---|---|---|
| 安否確認ができない | 家族、ケアマネジャー、訪問介護事業所からの電話がすべて話し中になり、様子が把握できない | 高い。倒れているのか切り忘れなのか区別できない |
| 本人が助けを呼べない | 回線がふさがっているため、110番や119番、家族への発信もできない | 非常に高い。急病や転倒時に致命的 |
| 通話料が膨らむ | 双方が切り忘れると、つながっている間ずっと通話料が発生する | 中程度。金額次第で家計への影響が大きい |
とくに二番目のリスクは、対策を考えるうえで軽視できません。固定電話が唯一の連絡手段になっている高齢者宅では、受話器が外れている間、外部とのつながりが完全に断たれた状態になります。
通話料は、相手と通話がつながっている時間に対して発生するのが基本です。双方が切り忘れて回線がつながったままなら、その時間分の料金がかかります。実際の請求内容は契約先の通話明細で確認でき、内容に納得できない場合はまず契約先の窓口に事情を伝えて相談してください。
固定電話の受話器の置き忘れを防ぐ実践的な工夫
受話器の「置き場所」を迷わせない
受話器が正しく戻っていない原因の多くは、置き方があいまいなことにあります。電話機の周囲に書類や小物が積み上がっていると、受話器が本体に届かず浮いた状態になりがちです。
- 電話機の周囲30センチ程度は物を置かず、常に空けておく
- 受話器の置き場所に、本体と同系色のシールやマスキングテープで目印を貼る
- 電話台の高さと椅子の位置を合わせ、無理な姿勢で受話器を戻さずに済むようにする
- 電話機コードを短めのものに替え、受話器が床に落ちにくくする
「ハウラ音」という警告音を知っておく
受話器が長時間外れたままになっていると、電話交換機から「ハウラ音」(オフフック音)と呼ばれる警告音が送られる仕組みがあります。受話器を戻すよう利用者に知らせるための音です。
ただし、この音が鳴るのは外れている受話器からです。耳が遠い方や、受話器が別室に転がっている場合には気づけません。「音が鳴るから大丈夫」と考えず、目で見て確認できる工夫と併用してください。
電話機そのものを見直す
受話器コード付きの機種で置き忘れが繰り返されるなら、機種の変更も選択肢です。親機の受話器がコードレスになっているタイプや、置き場所が浅く戻しやすい形状のものは、扱いやすさが変わります。
また、体の状態に合わせた福祉用の電話機も提供されています。NTT東日本・NTT西日本は「シルバーホン」シリーズとして、相手の声の大きさや速さを調整できる機種、ボタンを押すだけで登録先に通報できる機種などを扱っています。65歳以上の一人暮らしの方などを対象とした福祉用のレンタル価格が設定されている機種もあるため、条件は契約先に確認するとよいでしょう。
スマホの通話切り忘れを防ぐ設定と教え方
Android:電源ボタンで通話を終了できるようにする
Androidには、電源ボタンを押すだけで通話を終える設定が用意されています。Googleの案内では「設定」アプリからユーザー補助の項目に進み、「電源ボタンで通話を終了」をオンにする手順が示されています。機種やOSのバージョンによって項目名や配置が異なるため、実機で確認してください。
スマートフォンを使い終えたら電源ボタンを押して画面を消す、という動作はすでに習慣になっている方が多いはずです。その習慣に通話終了を重ねられる点が、この設定の利点です。
iPhone:サイドボタンで切れる状態にしておく
iPhoneには「設定」の「アクセシビリティ」内「タッチ」に、「ロックしたときに着信を終了しない」という項目があります。この項目がオフの状態であれば、サイドボタンを押すことで通話が終わります。誤操作防止のためにオンにしている場合は、切り忘れが多い方には見直しを検討してください。
| 対策 | 内容 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 物理ボタンで終話 | 電源ボタンやサイドボタンで通話を終えられるようにする | 画面操作が苦手な方全般 |
| 操作の一本化 | 赤い受話器マークだけを教え、他の切り方を教えない | 手順が増えると混乱しやすい方 |
| 通話定額プラン | かけ放題を契約し、切り忘れが料金に直結しないようにする | 切り忘れの再発が避けられない場合 |
| 明細の共有 | 家族が毎月の通話明細を確認できる状態にしておく | 離れて暮らしていて異変に気づきにくい場合 |
設定を変えたあとは、必ず家族の番号にかけて実際に切れるかどうかを一緒に試してください。スピーカーホンを使っている場合など、通話の状態によっては期待どおりに働かないこともあります。教える側が確かめたうえで伝えることが、混乱を減らす近道です。
利用者どうしが情報交換する質問掲示板などでは、「電源ボタンで切れる設定を親に教えている」「一定時間で自動的に切れる仕組みがあればいいのに」といった声が多く見られます。端末側で自動的に切断してくれる標準機能は一般的ではないため、設定と料金プランの組み合わせで備えるのが現実的な対応になります。
実家の電話がつながらないとき、家族がとる確認手順
「話し中」の原因を電話会社に調べてもらう方法はなくなった
かつては、相手の固定電話が話し中なのか受話器が外れているのかを確認できる「114(お話し中調べ)」というサービスがありました。しかしこのサービスは、固定電話網のIP網移行に伴い2024年1月1日をもって提供を終了しています。NTT東日本は、同じ機能を代わりに利用できるサービスはなく、代替サービスの提供予定もないと案内しています。
つまり、外から「受話器が外れているだけかどうか」を判定する手段は現在ありません。この前提を知らないまま古い情報をもとに動くと、貴重な時間を失います。
確認の進め方
- 時間を置いて2〜3回かけ直す。通話中であれば、数十分で状況が変わることがあります
- 別の連絡手段を試す。携帯電話、家族が把握している同居人、ショートメッセージなど、経路を変えて呼びかけます
- 近隣に確認を依頼する。近所の方、管理会社や大家、民生委員に、外からの様子を見てもらいます
- 関係者に連絡する。介護保険サービスを利用しているなら、担当ケアマネジャーや訪問介護事業所へ。訪問予定の有無や直近の様子がわかることがあります
- 地域包括支援センターに相談する。市区町村が設置する高齢者の総合相談窓口で、地域の支援機関と連携した対応につながる場合があります
- 身の危険が疑われる場合は警察に相談する。応答がなく、室内での急変が否定できないときは迷わず相談してください
なお、自宅の電話回線そのものの不具合を疑うときは、NTT東日本・NTT西日本の固定電話サービスであれば故障受付の113(携帯電話などからは0120-444-113)があります。ただしこれは自分の契約回線に関する相談窓口であり、他人の家の受話器が外れているかを調べる窓口ではありません。光コラボレーション事業者やケーブルテレビ、他社の光電話を利用している場合は、契約している事業者の窓口が対応先になります。
電話だけに頼らない見守り体制のつくり方
電話型の見守りサービスには弱点がある
ここで押さえておきたいのが、電話を使った見守りサービスは切り忘れが起きている間は機能しないという点です。回線がふさがっていれば、自動音声の確認電話も届きません。安否確認の手段と、切り忘れによって断たれる経路が同じでは、いざというときに二重の空白が生まれます。
だからこそ、電話とは別の経路を必ず一本用意しておくことが重要です。
手段を組み合わせて空白をなくす
| 種類 | 特徴 | 切り忘れ時の有効性 |
|---|---|---|
| 電話型(自動音声など) | 毎日決まった時間に体調を確認し、結果を家族へ通知する | 回線がふさがっていると届かない |
| 訪問型 | 担当者が自宅を訪ね、表情や室内の様子を含めて確認する | 有効。ただし訪問の間隔が空く |
| センサー型 | 人感センサーや電気の使用状況などから生活の動きを検知する | 有効。電話回線の状態に左右されない |
| 緊急通報装置 | ボタンを押すと登録先へ通報する。自治体が貸与している場合もある | 機器と回線の条件により異なるため要確認 |
公的な事業者が提供するサービスの一例として、日本郵便の「郵便局のみまもりサービス」があります。郵便局社員などが月1回、30分程度を目安に訪問して生活状況を報告する「みまもり訪問サービス」は月額2,500円(税込)、毎日自動音声で体調確認を行い結果をメールで知らせる「みまもりでんわサービス」は固定電話向けが月額1,070円(税込)、携帯電話向けが月額1,280円(税込)とされています。でんわサービスでは、未応答の場合に1時間以内へ再度架電し、2回連続で応答がなければ不在の結果をメールで知らせる運用になっています。オプションの駆けつけサービスは1回5,500円(税込)です。
訪問型とでんわ型を併用する意味は、まさにここにあります。電話が届かない期間があっても、人の目による確認が残るからです。自治体によっては独自の見守り事業や緊急通報装置の貸与を行っていることもあるため、まずは地域包括支援センターに相談すると、地域で使える選択肢が整理できます。
介護に関わる支援者が押さえておきたい視点
ケアマネジャーや訪問介護、通所サービスの職員にとって、利用者宅の電話が通じないことは日常的に起こりうる事態です。判断を早めるために、事前に整えておきたい点があります。
- 緊急連絡先を複線化する。固定電話だけでなく、本人の携帯、家族、近隣の協力者を順位づけて記録しておく
- 切り忘れの傾向を記録に残す。「先週も話し中が長く続いた」という情報があれば、次回の判断が早くなる
- 訪問時に受話器の状態を確認する。玄関を出る前に電話機を一目見る習慣をつけるだけで、防げる空白がある
- 本人の理解度に合わせて操作を減らす。教える手順が多いほど定着しにくいため、切り方は一つに絞る
- 物忘れ以外の変化を合わせて見る。日付の混乱、服薬の抜け、火の始末など、他の場面での変化と併せて評価する
切り忘れは本人にとって自覚しにくい出来事です。「また切り忘れていましたよ」と伝えるだけでは自尊心を損ないかねません。「受話器がちゃんと戻っているか、一緒に見ておきましょう」と、確認を日常動作の一部として共有する声かけのほうが、継続しやすくなります。
よくある質問
通話料は、相手と通話がつながっている時間に対して発生するのが基本です。双方が切り忘れて回線がつながったままの場合は、その間の通話料が発生します。実際に何分課金されたかは、契約先の通話明細で確認できます。金額に納得できない場合はまず契約先の窓口へ相談し、消費生活に関する相談は消費者ホットライン188も利用できます。
現在はありません。以前あった114(お話し中調べ)は2024年1月1日に提供を終了しており、NTT東日本は同じ機能を代わりに利用できるサービスはないと案内しています。時間を置いてかけ直す、別の連絡手段を試す、近隣や関係機関に確認を依頼する、という手順で進めてください。
切り忘れそのものは、年齢を問わず誰にでも起こります。ただし、頻度が明らかに増えている、他の場面でも手順の途中で止まることが増えた、日付や予定の混乱がある、といった変化が重なる場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談してみてください。電話の様子だけで判断せず、生活全体の変化として見ることが大切です。
スマートフォンや固定電話の標準機能として、一定時間で自動的に通話を打ち切る仕組みは一般的ではありません。現実的な備えは、電源ボタンなどの物理ボタンで確実に切れる設定にしておくこと、通話定額プランを契約して料金への影響を抑えること、家族が毎月の明細を確認できる状態にしておくことの組み合わせになります。
子機は充電台に戻さないと電池が消耗し、着信音が鳴らなくなります。使い終えたら必ず充電台に戻す習慣づけに加え、充電台を本人が普段いる部屋の目につく場所へ移すと戻しやすくなります。予備の子機を別室に置いておくのも有効です。
まとめ
- 切り忘れは、固定電話の受話器の置き忘れ、スマホの通話終了ボタンの押し忘れ、子機の戻し忘れの3パターンに分けて考えると対策しやすい
- 本当のリスクは通話料よりも、安否確認ができないことと、本人が110番や119番を使えなくなることにある
- 固定電話は「置き場所を迷わせない環境づくり」、スマホは「物理ボタンで終話できる設定」が基本の対策
- 相手の受話器が外れているかを調べる114は2024年1月1日に提供終了しており、代替サービスもない
- つながらないときは、時間を置いた再架電、別経路での連絡、近隣や関係機関への依頼、地域包括支援センターへの相談という順で動く
- 電話型の見守りは切り忘れ中には機能しないため、訪問型やセンサー型と組み合わせて空白をなくしておく
- 本人に覚えてもらうのではなく、忘れても困らない仕組みを整えることが再発防止につながる
電話がつながらない数時間は、離れて暮らす家族にとって長く感じられるものです。だからこそ、切り忘れが起きる前提で連絡の経路を二重にしておくこと、そして受話器を戻す動作が自然にできる環境を整えておくことが、何よりの安心材料になります。
訪問介護しんらい 
