高齢者の仕事は迷惑?と不安なとき|続け方・辞めどき・家族の支え方を解説

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こんな疑問を持つ方へ
  • 60代・70代になっても働いているけれど、職場に迷惑をかけていないか不安
  • 覚えるのが遅くなった、ミスが増えた気がして、辞めどきを考えている
  • 働き続けている親が心配で、「もう辞めたら」と言うべきか迷っている
  • 高齢者が働くことは、若い人や会社にとって迷惑なのか知りたい

「若い人の足を引っ張っているのでは」「周りに気をつかわせているのでは」。年齢を重ねて働いていると、そんな不安がふと頭をよぎることがあります。この記事では、高齢者の仕事が「迷惑」と言われやすい理由をデータから整理し、不安なときの見直し方、職場で気持ちよく働くための工夫、辞めどきの考え方、そして家族ができる支え方までをやさしく解説します。

※統計・制度の内容は2026年10月時点で公表されている資料に基づいています。

高齢者が仕事をするのは迷惑?データで見る働くシニアの今

結論からお伝えすると、高齢者が働くこと自体は迷惑ではありません。むしろ今の日本では、多くの職場が高齢のスタッフに支えられています。まずは数字で、働くシニアの現状を見てみましょう。

65歳以上の就業者は943万人、働く人の7人に1人

総務省が2026年9月に公表した資料によると、65歳以上の就業者数は943万人で、22年連続で増えて過去最多になりました。就業者全体に占める割合も13.8%と過去最高で、働いている人のおよそ7人に1人が65歳以上です。

項目 数値
65歳以上の就業者数 943万人(22年連続で増加、過去最多)
就業者全体に占める割合 13.8%(過去最高)
雇用者のうち非正規の割合 76.1%(パート・アルバイトなど)
多く働いている産業 卸売業・小売業、医療・福祉など

出典:総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」(2026年9月公表、労働力調査)。非正規の割合は役員を除く雇用者に占める割合

スーパーやコンビニ、介護施設などで、高齢のスタッフを見かけない日はほとんどありません。人手不足が続く中で、シニアの働き手はなくてはならない存在になっています。

日本の高齢者は「働き続けたい」人が多い

内閣府の令和8年版高齢社会白書では、日本・アメリカ・ドイツ・スウェーデンの65歳以上に、今後も収入を伴う仕事をしたいかを聞いています。「したい(続けたい)」と答えた人は日本が39.0%で、4か国の中で最も高い結果でした。

働く理由として日本で最も多かったのは「収入が欲しいから」、次いで「働くのは体によいから、老化を防ぐから」です。生活のためにも、健康のためにも、働くことを前向きにとらえている人が多いことがわかります。

国も「70歳まで働ける社会」を目指している

高年齢者雇用安定法では、会社に対して65歳までの雇用確保を義務づけ、2021年4月からは70歳までの就業機会の確保を努力義務としています。努力義務とは、「できるだけ取り組むように」と求められているものです。年齢を重ねても働くことは、社会全体が前提にしている働き方だといえます。

大切なこと
「迷惑かもしれない」と不安になるのは、周りに気を配れているからこそです。問題は年齢ではなく、体力や得意なことと仕事内容が合っているかどうか。合っていない部分は、働き方を調整すれば解決できることがほとんどです。

高齢者の仕事が「迷惑」と思われやすい場面|すれ違いが起きる5つの理由

それでも「迷惑」という言葉で検索されるのは、職場で小さなすれ違いが起きやすいからです。本人が気づきにくいポイントを知っておくと、先回りして防げます。

1. 新しい手順や機械を覚えるのに時間がかかる

レジやタブレット、記録システムなど、職場の機器は数年で大きく変わります。若い人が数回で覚えることに時間がかかると、教える側の負担に見えてしまうことがあります。

2. 体力やスピードの差が出やすい

重い物の運搬や長時間の立ち仕事、繁忙時間帯のスピードなどは、年齢による差が出やすい部分です。無理をして動きが遅れると、周りがフォローに回る場面が増えます。

3. 以前のやり方にこだわってしまう

長年の経験は大きな強みですが、職場のルールが変わっているのに「前はこうだった」と自己流で進めると、ほかのスタッフが困ることがあります。とくに年下の上司から指示を受ける場面では、すれ違いが起きやすくなります。

4. 体調による急な休みや、報告・連絡の遅れ

通院や体調不良で急に休むことが重なったり、「これくらいなら」と報告を後回しにしたりすると、シフトを組む側が困ってしまいます。休むこと自体ではなく、伝えるタイミングが遅れることが「迷惑」と受け取られやすいのです。

5. 聞こえにくさ・見えにくさによる聞き違い

騒がしい場所での口頭の指示や、小さな文字のメモは、聞き違いや見落としにつながります。本人は「ちゃんと聞いたつもり」でも、結果としてミスになってしまうことがあります。

職場の上司や同僚の立場から見た悩みと工夫は、高齢者のバイトは使えない?現場の本音とデータで見る現実でくわしく解説しています。

迷惑をかけているかも…と不安なときのセルフチェック

不安を感じたときは、気持ちだけで判断せず、具体的なサインで振り返ってみましょう。「続けてよいサイン」と「見直したいサイン」を整理しました。

続けてよいサイン・見直したいサインの比較

観点 続けてよいサイン 見直したいサイン
体力 仕事の翌日に疲れが残らない 休日も寝て過ごすほど疲れがたまる
安全 ヒヤッとする場面がほとんどない つまずき・ふらつき・物を落とすことが増えた
ミス ミスはあるが、指摘されれば次から直せる 同じミスを何度も指摘される、指摘されたこと自体を忘れている
人間関係 困ったときに相談できる人がいる 声をかけづらく、職場で孤立している
気持ち 仕事に行くのが生活の張り合いになっている 出勤前に強い不安や気分の落ち込みがある

「見直したいサイン」が一つあったからといって、すぐに辞める必要はありません。仕事内容や勤務時間を調整すれば解決することも多いので、まずは次の章の工夫や、職場への相談を考えてみてください。

周りの反応は「事実」と「思い込み」を分けて考える

不安が強いと、同僚のため息や忙しそうな様子まで「自分のせいだ」と感じてしまいがちです。実際に指摘されたこと(事実)と、自分がそう感じたこと(思い込み)を分けて書き出してみると、気持ちが整理しやすくなります。気になる場合は、信頼できる上司に「何か改善してほしいことはありますか」と直接聞いてみるのも一つの方法です。

もの忘れや段取りの乱れが続くときは受診も考える

約束や手順をすっかり忘れる、慣れた作業の段取りがわからなくなる、といった変化が続く場合は、年齢による疲れだけでなく、病気が隠れていることもあります。自分だけで判断せず、かかりつけ医や「もの忘れ外来」に相談してみてください。どこに行けばよいかわからないときは、お住まいの地域包括支援センターでも相談できます。

職場に迷惑をかけないための働き方の工夫|今日からできる6つのこと

年齢による変化をゼロにすることはできませんが、工夫しだいで周りの負担はぐっと減らせます。すぐに始められることを6つ紹介します。

覚え方を工夫して「聞き返し」を減らす

  • 手順はメモに残す:教わった内容はその場で書き、自分用のマニュアルにする
  • 質問はまとめて聞く:わからないことはメモしておき、手が空いたタイミングでまとめて聞く
  • 復唱して確認する:「〇〇を△時までに、ですね」と言い直すと、聞き違いを防げる

できること・難しいことを先に伝えておく

重い物や高い所の作業、長時間の立ち仕事など、難しいことを我慢して引き受けると、けがやミスにつながります。最初に伝えておけば、職場も仕事の割り振りを考えやすくなります。

伝え方の例
「腰の調子があまりよくないので、20キロ以上の荷物は2人で運ばせてもらえると助かります。そのぶん、品出しや袋詰めは任せてください。」
このように、難しいことと一緒に「代わりにできること」を伝えると、相手も受け入れやすくなります。

年下の上司・同僚とは「役割」で向き合う

年下の上司から指示を受けることに抵抗を感じる方もいるかもしれません。年齢ではなく「この職場での役割」と考えると、気持ちが楽になります。経験からの意見は、指示を受けた後に「一つ提案してもいいですか」と伝えると、角が立ちにくくなります。

体調の変化や通院予定は早めに共有する

通院の予定がわかったら、すぐにシフト担当者へ伝えましょう。体調がすぐれない日は、無理に出勤して途中で帰るより、早めに連絡したほうが職場は代わりの人を手配しやすくなります。

得意なことで職場に貢献する

丁寧な接客、落ち着いた電話対応、細かい作業の正確さなど、経験のある人だからこそできることがあります。苦手な部分を補うだけでなく、得意なことを積極的に引き受けると、「頼れる人」として見てもらいやすくなります。

感謝をこまめに言葉にする

手伝ってもらったときの「ありがとう、助かりました」は、職場の空気をやわらかくします。助けてもらうことを申し訳なく思うより、感謝を伝えるほうが、お互いに気持ちよく働けます。

けがや体調不良は迷惑ではない|労災と職場の安全対策を知っておこう

「迷惑をかけたくない」という気持ちから、けがや体調不良を隠してしまう方がいます。しかし、隠すことのほうが本人にも職場にも大きなリスクになります。

労働災害の約3割は60歳以上

令和7年の全国の労働災害では、休業4日以上の死傷者のうち60歳以上が31.3%を占めました。とくに転倒や、高い所からの墜落・転落は、若い世代に比べて起こりやすいとされています。

出典:厚生労働省 高知労働局「令和7年 労働災害発生状況」(全国平均として掲載)

つまずきやすい段差や暗い通路、滑りやすい床など、職場に気になる場所があれば遠慮なく伝えましょう。それは「わがまま」ではなく、ほかのスタッフのけがを防ぐことにもつながります。

2026年4月から、会社には高齢者の安全に配慮する努力義務がある

2026年4月1日から改正労働安全衛生法が施行され、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善や作業の管理などが、すべての事業者の努力義務になりました。あわせて厚生労働省の「高年齢者の労働災害防止のための指針」が適用されています。

指針では、照明を明るくする、段差をなくす、短時間勤務や交替制を活用する、体力チェックを行うといった取り組みが示されています。つまり、年齢に合わせて働き方を調整してもらうことは、正当な相談なのです。

パート・アルバイトでも労災保険が使える

仕事中や通勤途中のけがは、パートやアルバイトでも労災保険の対象になり、給付内容は正社員と同じです。通勤途中に転んだ場合も対象になると考えられており、その場合は健康保険ではなく労災保険を使うため、受診時に「通勤途中のけが」と伝えてください。

なお、休業するけがなどがあったのに、会社が労働基準監督署への報告(労働者死傷病報告)をわざと出さないことは「労災かくし」と呼ばれ、罰則の対象になっています。「迷惑になるから」と自分から黙っておく必要はありません。

大切なこと
けがや体調の悪化を感じたら、すぐに上司へ報告し、医療機関を受診してください。労災になるかどうかわからないときや、職場に相談しにくいときは、全国の労働局や労働基準監督署にある「総合労働相談コーナー」で無料で相談できます。気分の落ち込みや眠れない状態が続く場合は、かかりつけ医にも相談してください。

仕事の辞めどきに迷ったら|判断の目安と働き方の選択肢

「迷惑をかける前に辞めたほうがいいのでは」と考える方もいるでしょう。辞めるか続けるかは、一人で決めずに、順番に考えていくのがおすすめです。

辞めるか続けるかを決める4つのステップ

  1. 不安の中身を書き出す
    体力、ミス、人間関係、通勤など、何が一番気になっているのかをはっきりさせます。
  2. 体の状態を確認する
    体力の低下やもの忘れが気になるなら、かかりつけ医に相談し、働き続けてよいか意見を聞きます。
  3. 職場に調整を相談する
    勤務時間を短くする、担当業務を変える、週の日数を減らすなど、辞める以外の方法がないか話し合います。
  4. 家族とお金のことを確認する
    収入が減った場合の生活費や、年金との関係を家族と一緒に確認したうえで決めます。

辞める以外にもある働き方の選択肢

選択肢 向いている人
勤務時間・日数を減らす 仕事は好きだが、疲れが残るようになった人
同じ職場で担当を変える 体力仕事はきついが、職場の人間関係は良好な人
シルバー人材センターに登録する 短時間・単発の仕事で、地域の役に立ちたい人(原則60歳以上)
ハローワークで転職先を探す 今の仕事内容が合わず、自分に合う職場を探したい人
仕事を辞めて地域活動に移る 収入より、人とのつながりや生きがいを大切にしたい人

仕事を辞めた後は、生活のリズムや人と話す機会が急に減ることがあります。趣味や地域の集まりなど、次の居場所を考えておくと安心です。高齢者に趣味がないとどうなる?研究データで見る5つの変化もあわせて参考にしてください。

会社から退職をすすめられたときは

会社から「そろそろ辞めては」と退職をすすめられること(退職勧奨)もあります。退職勧奨に応じるかどうかは働く人が自由に決められ、その場で返事をする必要もありません。続けたい場合は、その意思をはっきり伝えましょう。強く何度も迫られて困ったときは、総合労働相談コーナーに相談できます。

働く親が心配な家族へ|「もう辞めたら」の前にできるサポート

働き続ける親の姿を見て、「無理していないかな」「職場に迷惑をかけていないかな」と心配になる家族も多いと思います。ただ、心配のあまりかけた一言が、親の生きがいを奪ってしまうこともあります。

まずは話を聞き、本人の気持ちを確かめる

働く理由は人それぞれです。収入のため、健康のため、人と話す場がほしいからなど、本人がなぜ働いているのかをまず聞いてみてください。理由がわかると、「辞める」以外の支え方も見えてきます。

NGワードの言い換え例

避けたい言葉 言い換えの例
「もう年なんだから辞めたら」 「最近疲れていない?体のことが少し心配で」
「職場に迷惑かけてるんじゃない?」 「仕事で困っていることはない?話なら聞くよ」
「お金なら何とかするから」 「働くのが楽しいなら応援するよ。無理はしないでね」

家族が気をつけて見ておきたいサイン

  • 仕事の後に極端に疲れている、休日に寝込むことが増えた
  • 通勤中に転んだ、あざや小さなけがが増えた
  • 仕事の話をしなくなった、職場の愚痴が急に増えた
  • 同じ話をくり返す、約束を忘れることが目立つ

こうした変化に気づいたら、責めずに「最近どう?」と声をかけ、必要に応じて受診や相談先につなげてあげてください。

介護が必要になっても、すぐに仕事をあきらめなくてよい

持病の悪化や足腰の衰えで生活に手助けが必要になった場合でも、介護保険のサービスを使えば、働きながら暮らしを整えられることがあります。たとえば訪問介護のヘルパーが家事を手伝うことで、仕事に使える体力を残せるケースもあります。どんなサービスが使えるかは、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談してみてください。

高齢者の仕事の悩みを相談できる窓口

一人で抱え込まず、悩みの内容に合った窓口を頼りましょう。家族が代わりに相談できるところもあります。

悩み別の相談先一覧

相談先 こんなときに
ハローワーク(生涯現役支援窓口など) 自分に合う仕事を探したい、転職を考えている
シルバー人材センター 短時間・単発の仕事を地域で続けたい
総合労働相談コーナー 退職をすすめられた、職場で嫌がらせを受けている、労災のことを知りたい
かかりつけ医・産業医 体力やもの忘れが心配、働き続けてよいか意見がほしい
地域包括支援センター 生活や介護のことも含めて相談したい、どこに相談すればよいかわからない

相談前に準備しておくとよいこと

相談の前に、勤務時間や仕事内容、困っていること、体調の変化などをメモしておくと、話がスムーズに進みます。雇用契約書や就業規則が手元にあれば、あわせて持っていくと安心です。

よくある質問

Q. 高齢者が働くと、若い人の仕事を奪って迷惑になりませんか?
A. そう心配する必要はほとんどありません。65歳以上で雇われて働く人の7割以上はパート・アルバイトなどの非正規で、人手不足の職場を支えています。国も70歳までの就業機会の確保を会社に求めており、年齢を重ねて働くことは社会全体が前提にしている働き方です。
Q. 職場で「迷惑だ」と言われたら、辞めるしかないですか?
A. すぐに辞める必要はありません。まずは何が問題なのかを具体的に聞き、担当業務や勤務時間の調整で解決できないか相談してみてください。人格を否定するような言葉をくり返し言われる場合は、総合労働相談コーナーに相談できます。
Q. 何歳まで働くのが普通ですか?
A. 決まった年齢はありません。65歳以上でも働いている人は943万人いて、年齢よりも体の状態や仕事との相性で決める人が多くなっています。かかりつけ医の意見や家族の考えも聞きながら、無理のない形を選んでください。
Q. 持病があることを職場に伝えると、迷惑がられませんか?
A. 業務に影響しそうな持病は、伝えておくほうが安心です。急に体調をくずしたときに周りが対応しやすくなり、結果的に職場の負担を減らせます。どこまで伝えるか迷うときは、かかりつけ医や産業医に相談してみてください。
Q. 親に仕事を辞めてほしいのですが、どう説得すればよいですか?
A. 説得より先に、親がなぜ働きたいのかを聞いてみてください。収入や生きがいなど理由がわかれば、勤務時間を減らす、体の負担が少ない仕事に変えるなど、辞める以外の方法も一緒に考えられます。

まとめ

  • 65歳以上の就業者は943万人で、働く人の約7人に1人。高齢者が働くこと自体は迷惑ではない
  • 「迷惑」と思われやすいのは、覚え方・体力・報告の遅れなどのすれ違いで、工夫で減らせる
  • 不安なときは、体力・安全・ミス・人間関係・気持ちのサインで冷静に振り返る
  • できないことは「代わりにできること」と一緒に早めに伝えると、職場も調整しやすい
  • 2026年4月から、会社には高齢者の安全に配慮する努力義務がある。けがは隠さず報告する
  • 辞めるかどうかは、時短・担当変更・シルバー人材センターなどの選択肢も含めて考える
  • 家族は「辞めたら」より先に、働く理由を聞いて体調の変化を見守る

「迷惑をかけていないかな」と考えられるのは、周りを大切に思っている証拠です。その気持ちを一人で抱え込まず、職場や家族、相談窓口と共有すれば、自分に合った働き方がきっと見つかります。まずは今の不安を一つ書き出して、信頼できる人に話すところから始めてみてください。

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