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こんな疑問を持つ方へ
- 親が一日中テレビの前に座っていて、このままで大丈夫か心配
- 趣味がないと認知症になりやすいと聞いて不安になった
- 趣味を勧めても「面倒くさい」と断られてしまう
- 今から何か始めても意味があるのか知りたい
- 介護の現場で、趣味のない利用者への関わり方に悩んでいる
高齢者に趣味がないとどうなるのか。答えを先にお伝えすると、「必ず病気になる」わけではありません。ただし、大規模な研究では、趣味のない高齢者は認知症や要介護、死亡のリスクが高い傾向が繰り返し確認されています。
この記事では、起こりやすい変化とその根拠となるデータ、そして本人を追い詰めずに楽しみを取り戻すための具体的な方法をお伝えします。
高齢者に趣味がないとどうなる?起こりやすい5つの変化
趣味がないこと自体が悪いのではありません。問題になりやすいのは、趣味がないことで「動かない」「人と会わない」「頭を使わない」生活に傾いてしまうことです。代表的な変化を5つ紹介します。
1. 体を動かす機会が減り、足腰が弱りやすい
出かける用事がなくなると、家の中で過ごす時間が長くなります。動かない状態が続くと、心身の機能が全体的に低下する「生活不活発病(廃用症候群)」につながることがあります。疲れやすくなる、歩くのがおっくうになるといった変化から始まり、フレイル(加齢による心身の虚弱)が進む悪循環に入りやすくなります。
2. 人と話す機会が減り、孤立しやすい
定年退職や配偶者との死別のあと、趣味の仲間がいないと、家族以外と話す機会が急に減ります。会話は、言葉を選ぶ、相手の表情を読む、記憶をたどるなど、脳を幅広く使う活動です。人との交流が減ると、生活全体の張り合いも失われがちです。
3. 気持ちが沈み、うつ状態につながることがある
「楽しみがない」「することがない」状態が長く続くと、気分の落ち込みや無気力につながることがあります。生活不活発病も、体だけでなく心や頭の働きに影響し、うつ状態や知的活動の低下を招くことがあると指摘されています。
4. 認知症の発症リスクが高い傾向がある
国内の大規模な追跡研究では、趣味のない高齢者は趣味のある高齢者に比べ、認知症を発症する確率が高い傾向が確認されています。詳しい数値は次の章で紹介します。
5. 生活リズムが崩れ、「一日が長い」と感じるようになる
決まった予定がないと、起床や食事の時間がずれやすくなります。昼寝が長くなって夜に眠れず、日中にぼんやりするという流れもよく見られます。趣味は「その日にやること」をつくり、生活にメリハリを与える役割も担っています。
| 変化の種類 | 起こりやすい状態 | 放っておくと |
|---|---|---|
| 体 | 外出が減る、歩く量が減る | 筋力低下、フレイル、転倒 |
| つながり | 家族以外と話さない | 孤立、閉じこもり |
| 心 | 楽しみがない、張り合いがない | 気分の落ち込み、無気力 |
| 脳 | 新しい刺激が少ない | 認知機能の低下 |
| 生活リズム | 予定がなく昼夜が乱れる | 睡眠の質の低下、日中の活動量減少 |
データで見る「趣味がない高齢者」の健康リスク
ここでは、全国の高齢者を長期間追跡している日本老年学的評価研究(JAGES)などの研究結果を紹介します。数万人規模のデータで、趣味と健康の関係が分析されています。
趣味がない人は認知症リスクが約1.26倍
2010年に要介護認定を受けていなかった高齢者約5万人を約6年間追跡した研究(2023年発表)があります。この研究では、趣味の有無と、趣味を一人でするかグループでするかによって3つの群に分け、認知症の発症を比べました。
| グループ | 人数 | 認知症になる確率(一人で趣味をする人を1.00とした比) |
|---|---|---|
| 趣味なし | 15,621人 | 1.26(高い) |
| 趣味を一人でのみしている | 19,920人 | 1.00(基準) |
| 趣味をグループでしている | 15,394人 | 0.81(19%低い) |
性別、年齢、所得、持病、うつ、歩行時間、外出頻度などの影響を考慮して算出された値です。
注目したいのは、趣味は「あるかないか」だけでなく「誰かと一緒にするか」でも差が出るという点です。研究チームは、趣味の仲間が集まる場は交流が生まれやすく、心理的ストレスが少ないことが影響していると考察しています。
趣味の数が多いほど認知症リスクは低くなる
同じくJAGESの約5万人のデータを分析した別の研究(2020年発表)では、趣味の種類の数が多いほど認知症の発症リスクが低くなる傾向が、男女ともに確認されています。種類別に見ると、次の趣味で特にリスクが低くなっていました。
| 対象 | 認知症リスクが低かった趣味(その趣味がない人を1とした比) |
|---|---|
| 男女共通 | グラウンド・ゴルフ(男女とも0.80)、旅行(男性0.80、女性0.76) |
| 男性 | ゴルフ(0.61)、パソコン(0.65)、釣り(0.81)、写真撮影(0.83) |
| 女性 | 手工芸(0.73)、園芸・庭いじり(0.85) |
趣味が2つで死亡リスク10%減、5つで31%減
65歳以上の約4万8,000人を約6年間追跡した研究では、趣味の数が多いほど死亡リスクが低くなっていました。趣味が0個の人に比べ、2個の人で10%、5個の人で31%低いという結果です。タイプ別では「体を動かす趣味」と「誰かと一緒に行う趣味」の効果が特に大きいと報告されています。
社会活動に参加している人は生きがいを感じやすい
2025年に公表された令和7年版高齢社会白書では、65歳以上で直近1年間に何らかの社会活動に参加した人のうち、生きがいを「十分感じている」または「多少感じている」と答えた人は84.6%でした。いずれの活動にも参加しなかった人を23.0ポイント上回っています。
ワンポイント:データの読み方
これらの研究は「趣味がある人ほどリスクが低い」という関連を示したもので、「趣味をやめたら必ず病気になる」という意味ではありません。もともと健康な人ほど趣味を楽しめるという側面もあります。そのため、研究では持病や生活習慣などの影響をできるだけ取り除いたうえで比較しています。
70代・80代からでも遅くない?趣味を「始めた人」のデータ
「もう年だから今さら」と感じる方にこそ知っていただきたいのが、趣味や余暇活動を途中から始めた人を追跡した研究です。
JAGESに参加した平均年齢72.8歳の高齢者3万8,125人を対象に、2010年と2013年の調査結果を比べ、その後6年間の経過を追いました。
| 項目(2020年まで) | 2回とも余暇活動なし | 2013年に余暇活動を開始 |
|---|---|---|
| 死亡率 | 28.6% | 21.1% |
| 要介護2以上の発生率 | 24.6% | 18.1% |
年齢や健康状態などの影響を調整しても、活動を始めた人は始めなかった人に比べ、死亡リスクが0.82倍と低くなっていました。要介護リスクも低い傾向が見られています。
つまり、高齢になってからでも、何かを始めること自体に意味がある可能性が高いといえます。大切なのは「若いころからの趣味」にこだわらず、今の体力と気持ちに合う楽しみを見つけることです。
高齢者が趣味を持てない・やめてしまう主な理由
趣味がない背景には、本人の性格だけでなく、年齢とともに訪れる生活の変化があります。理由がわかると、周囲の関わり方も変わってきます。
| きっかけ | よくある状況 |
|---|---|
| 定年退職 | 仕事中心の生活で、仕事以外の楽しみを持つ機会がなかった |
| 配偶者との死別 | 夫婦で出かけていた習慣がなくなり、一人では行く気になれない |
| 体の衰え | 膝や腰の痛み、目や耳の衰えで、以前の趣味が続けられなくなった |
| 移動手段の変化 | 運転をやめて、教室やサークルに通いにくくなった |
| 病気や入院 | 入院をきっかけに気力が落ち、元の生活に戻れていない |
| 思い込み | 「趣味は立派なもの」「上達しないと恥ずかしい」と感じている |
家族の悩みとしては、「親が毎日テレビの前に座っているだけ」「勧めても面倒くさがる」「デイサービスを勧めると怒る」といった声が多く見られます。本人にとっては、できなくなったことへの寂しさや、新しい場所に行く不安が根底にあることも少なくありません。
「何にも興味がない」は病気のサインのことも 見逃したくない変化
もともと無趣味で穏やかに過ごしている人と、以前は楽しんでいたことに急に興味を示さなくなった人とでは、意味合いが大きく異なります。後者の場合、心や脳の不調が隠れていることがあります。
高齢者のうつ病
興味や喜びを感じられなくなることは、うつ病の代表的な症状の一つです。高齢者の場合、「気分が落ち込む」と訴えるより、体のだるさや食欲不振、不眠などの体の不調として現れることもあります。
認知症の初期症状としての意欲低下
認知症の初期には、物忘れより先に、意欲や自発性が低下する「アパシー」と呼ばれる状態が目立つことがあります。趣味の手順が複雑に感じられて、自分からやめてしまうケースもあります。
| 様子を見てもよいケース | 相談を検討したいケース |
|---|---|
| 昔から趣味は少ないが、会話や食事を楽しめている | 好きだったことを急にやめ、理由を聞いても「面倒」としか言わない |
| 散歩や家事など、日課は続けている | 身だしなみや入浴に無頓着になった |
| 表情が明るく、よく眠れている | 食欲がない、眠れない、表情が乏しい状態が続く |
| 家族や近所の人との交流がある | 同じ話を繰り返す、約束を忘れることが増えた |
相談先の目安
- 体調や気分の変化が気になるときは、まずかかりつけ医に相談
- 介護や生活全般の不安は、お住まいの地域の地域包括支援センター(高齢者の総合相談窓口)へ
- すでに介護サービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーに様子を共有
趣味がない高齢者の趣味の見つけ方とおすすめの活動
まず「趣味」のハードルを下げる
趣味と聞くと、習い事や作品づくりのような特別な活動を想像しがちです。しかし健康面で大切なのは、体を動かす、人と関わる、心が動く時間が生活にあることです。次のようなことも、立派な楽しみです。
- 毎朝同じ道を散歩して、季節の変化を見つける
- ベランダでミニトマトやハーブを育てる
- 孫とテレビ電話をする、近所の人と立ち話をする
- 町内の清掃や見守りなど、地域の役割を担う
- 料理や家庭菜園など、家族のために腕をふるう
「役割」は生きがいと深く関係しています。家族の中で頼られることや、地域で「ありがとう」と言われる経験が、趣味と同じくらい大きな張り合いになる方もいます。
過去の経験から「好き」を掘り起こす
ゼロから新しい趣味を探すより、若いころに好きだったこと、仕事で得意だったことから探すほうが、本人の気持ちが動きやすくなります。昔のアルバムを一緒に見ながら話を聞くと、思わぬヒントが見つかることがあります。
| 過去の経験・好み | つながりやすい活動の例 |
|---|---|
| 事務・経理の仕事 | 家計簿アプリ、パソコン教室、町内会の会計 |
| 職人・技術系の仕事 | 木工、日曜大工、地域の修理ボランティア |
| 子育て・料理が得意 | 料理教室、地域の食堂のお手伝い、手工芸 |
| 学生時代の部活動 | グラウンド・ゴルフ、合唱、卓球 |
| 旅行や写真が好きだった | 日帰りバス旅行、スマートフォンでの写真撮影 |
体の状態に合わせて選ぶ
| 体の状態 | おすすめの活動 |
|---|---|
| 元気に歩ける | ウォーキング、グラウンド・ゴルフ、旅行、ボランティア |
| 長時間の外出は不安 | 園芸、近所のサロン、公民館の講座、体操教室 |
| 家で過ごすことが多い | 塗り絵、手芸、脳トレ、音楽鑑賞、オンラインの囲碁・将棋 |
| 介護サービスを利用中 | デイサービスのレクリエーション、作品づくりを自宅でも続ける |
一人で始めて、少しずつ「誰かと一緒」へ
研究では、グループで趣味をする人ほど認知症リスクが低い傾向がありました。とはいえ、最初からサークルに入るのは負担が大きいものです。一人で試す、家族と一緒にやる、地域の集まりに顔を出すという順番で、段階的に広げていくと無理がありません。
地域で使える主な場所
- 通いの場・サロン:住民が主体となって体操や茶話会などを行う、身近な集まり
- 老人クラブ:地域の高齢者による親睦や健康づくりの会
- 公民館・生涯学習センター:趣味や教養の講座
- シルバー人材センター:経験を生かして働きながら仲間をつくれる
地域ごとの情報は、市区町村の広報誌や地域包括支援センターで確認できます。
家族・介護職ができる関わり方 無理に勧めないコツ
本人のためを思っての声かけが、かえって心を閉ざすきっかけになることもあります。ポイントは「趣味を持たせる」ではなく「楽しい時間を一緒につくる」という姿勢です。
| 避けたい声かけ | 言い換えの例 |
|---|---|
| 「何か趣味を持たないとボケるよ」 | 「今度この教室、一緒にのぞいてみない?」 |
| 「毎日テレビばかりで」 | 「その番組、どこが面白いの?」(関心を広げる) |
| 「デイサービスに行ったら?」 | 「お茶を飲みに行くつもりで、一回だけ見学してみよう」 |
| 「昔はあんなに好きだったのに」 | 「またあの料理、教えてほしいな」(役割を頼む) |
「教えてほしい」とお願いする
高齢者は「助けられる側」になることに抵抗を感じやすいものです。「漬物の漬け方を教えて」「この道具の使い方を知ってる?」と頼むと、本人の経験が生き、自然に手や頭を動かすきっかけになります。
小さな成功を一緒に喜ぶ
花が咲いた、塗り絵が一枚できた、散歩で知り合いに会えた。そうした小さな出来事を話題にして一緒に喜ぶことが、「またやってみよう」という気持ちにつながります。
介護職は「生活歴」を手がかりに
介護の現場では、アセスメントで把握した生活歴や職歴を、レクリエーションや役割づくりに生かせます。全員で同じ活動をするだけでなく、配膳の手伝いや新聞のたたみ直しなど、本人らしい役割を用意するのも効果的です。
高齢者と趣味に関するよくある質問
必ずなるわけではありません。研究では趣味のない人の認知症リスクが高い傾向が示されていますが、あくまで集団全体での傾向です。趣味がなくても、散歩や家事、人との会話を日常的に続けている方は大勢います。
無理に誘わず、まずは本人の話を聞くことから始めましょう。一緒に買い物や散歩に出かけるなど、趣味と意識させない形で外に出る機会をつくるのがおすすめです。以前と比べて急に意欲が落ちた場合は、うつや認知症の可能性もあるため、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談してください。
好きな番組を楽しんでいるなら、立派な楽しみの一つです。ただし、一日中座ったままだと活動量が不足します。番組の内容を家族と話す、紹介された料理を作ってみる、旅番組で見た場所に出かけるなど、テレビを入り口に活動を広げる工夫をしてみてください。
つくれます。地域の通いの場やサロン、公民館の講座は、一人で参加する方も多い場です。外出が難しい場合は、電話やビデオ通話、オンラインの囲碁・将棋など、自宅から人とつながる方法もあります。
仕事で培った経験を生かせる活動から探すと、始めやすくなります。シルバー人材センターや地域のボランティアのように、「役割」や「成果」が見える活動のほうが、純粋な趣味より参加しやすい方もいます。
まとめ
- 高齢者に趣味がないと、「動かない」「人と会わない」生活に傾き、体力低下や孤立、気分の落ち込みが起こりやすくなります
- JAGESの研究では、趣味がない人の認知症リスクは、一人で趣味をする人の約1.26倍でした
- 趣味の数が多いほど、また仲間と一緒に行うほど、認知症や死亡のリスクが低い傾向があります
- 70代から余暇活動を始めた人でも、死亡リスクが低くなっていたというデータがあります
- 好きだったことに急に興味を示さなくなった場合は、うつや認知症のサインの可能性もあるため、早めに相談を
- 趣味は立派なものでなくて大丈夫です。日課や役割、小さな楽しみから、少しずつ「誰かと一緒」へ広げていきましょう
訪問介護しんらい 
