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- 介護をしている親のわがままに疲れてしまった
- どこまで本人の要求を聞けばよいのかわからない
- 食事・入浴・デイサービスを拒否されて困っている
- 以前より頑固になったのは認知症の影響なのか気になる
- 怒ったり距離を置いたりする自分を責めてしまう
介護で「わがまま」と感じる言動には、本人の性格だけでなく、不安や認知機能の変化、体調不良、生活環境などが隠れていることがあります。一方、介護する家族がすべての要求に応じ続ける必要もありません。
大切なのは、本人の気持ちを尊重しながら、介護する側が無理なく続けられる境界線をつくることです。
この記事では、高齢者がわがままに見える理由から、介護拒否や暴言への具体的な対応、親の要求をどこまで聞けばよいのか、介護者が限界になる前の相談先までわかりやすく解説します。
介護で「わがまま」と感じたら、まず知っておきたいこと
親や配偶者を介護していると、「せっかく作った食事なのに文句を言う」「デイサービスに行かないと言い張る」「何度も同じ要求をする」といった場面があります。
毎日のことになると、「どうしてこんなにわがままになったのだろう」と感じるのも不思議ではありません。
ただし、介護では本人の言動をすぐに「性格の問題」「わがまま」と決めつけないことが重要です。
「わがままに見えること」と「わがままであること」は別
たとえば、「お風呂に入りたくない」という言葉だけを見れば、単なるわがままのように感じるかもしれません。
しかし、その背景には次のような事情が隠れていることがあります。
- 服を脱ぐのが寒い
- 転倒するのが怖い
- 裸を見られることが恥ずかしい
- 関節などに痛みがある
- なぜ入浴するのか理解できていない
- 知らない介護職員に介助されることが不安
見えている「拒否」という行動だけでは、本当の理由はわかりません。
「なぜ言うことを聞かないのか」ではなく、「この人にとって何が嫌なのだろう」と考えると、対応方法を見つけやすくなります。
本人を尊重することと、すべて要求どおりにすることは違う
本人の気持ちを大切にすることは、言われたことを何でも実行することではありません。
たとえば、夜中に何度も買い物へ行ってほしいと言われても、家族が毎回応じていては生活が成り立たなくなります。
この場合は「買い物に行きたい」という希望そのものを否定するのではなく、「今日は行けないけれど、明日の午前中なら行ける」と現実的な選択肢を提示します。
本人の意思を尊重しながらも、安全や家族の生活を守るために線を引くことが必要です。
高齢者がわがままに見える主な原因
高齢になったからといって、必ず性格がわがままになるわけではありません。
以前とは違う言動が増えた場合には、「性格が変わった」と考える前に、複数の原因を確認してみましょう。
| 考えられる背景 | よくある様子 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 自分で決められない不満 | 介護者の提案を何でも拒否する | 本人が選べる場面が残っているか |
| 認知機能の変化 | 同じ要求を繰り返す、説明を忘れる | 物忘れや生活上の変化がないか |
| 身体的不快感 | 怒る、落ち着かない、介助を嫌がる | 痛み、便秘、発熱、睡眠、水分不足など |
| 不安・孤独 | 家族を何度も呼ぶ、依存が強くなる | 一人になることへの不安がないか |
| 聞こえ・理解の問題 | 説明を無視する、怒ったように見える | 話が聞こえているか、説明が長すぎないか |
| 長年の生活習慣 | 時間や方法へのこだわりが強い | 以前から大切にしてきた習慣か |
自分で決められることが減ったことへの抵抗
介護が必要になると、食事の時間、入浴する日、通院、服薬、外出などを周囲が決める場面が増えていきます。
介護者には必要な支援でも、本人から見れば「自分の生活なのに何でも決められてしまう」と感じることがあります。
その結果、「嫌だ」「行かない」「今はしたくない」という形で抵抗することがあります。
「赤と青の服ならどちらがいい?」「お風呂は夕食前と後のどちらにする?」など、小さな選択を本人に任せるだけでも、自分で決めている感覚を保ちやすくなります。
認知症の行動・心理症状が影響していることがある
認知症では、記憶や理解などの認知機能だけでなく、不安、焦り、興奮、妄想、介護への抵抗などがみられることがあります。
こうした状態は一般に「認知症の行動・心理症状(BPSD)」と呼ばれます。
厚生労働省の認知症に関する資料でも、行動・心理症状は環境、ケア、健康状態、心理状態などの影響を受けるとされています。
そのため、認知症があるからといって「本人の性格だから仕方ない」と考えるのではなく、環境や接し方、身体状態を確認することが大切です。
痛みや便秘などを言葉で伝えられないことがある
認知機能が低下すると、「腰が痛い」「お腹が苦しい」「喉が渇いた」といった不快感をうまく説明できない場合があります。
すると、「触らないで」「やりたくない」「うるさい」といった言葉になって表れることがあります。
特に、急に怒りっぽくなった、落ち着かなくなった、食事を拒否し始めたなど、短期間で大きな変化がみられる場合は、単なるわがままと判断せず、身体状態について医療職へ相談することが大切です。
家族だからこそ要求が強くなることもある
介護サービスの職員には穏やかなのに、家族には強く当たる高齢者もいます。
家族からすると「外ではいい顔をするのに」と腹立たしく感じる場面です。
しかし、長年一緒に暮らしてきた相手だからこそ甘えや感情を出しやすかったり、「家族ならわかってくれる」という期待が強かったりすることもあります。
家族だけで抱えるほど関係がこじれる場合は、第三者に入ってもらうことが有効です。
介護でよくある「わがまま」への場面別対応
デイサービスや介護サービスを拒否する
「今日はデイサービスに行かない」と言われると、家族は予定が崩れて困ってしまいます。
このとき、「行くって決まっているでしょう」と正面から説得し続けると、本人がさらに意地になってしまう場合があります。
まず確認したいのは、何が嫌なのかです。
- 朝起きるのがつらい
- 苦手な利用者がいる
- 入浴が嫌
- 迎えの車に乗ることが不安
- 何をしに行く場所なのかわからなくなっている
理由がわかれば、ケアマネジャーや事業所と相談し、利用時間、曜日、入浴方法、席などを調整できる可能性があります。
食事に文句を言う・食べたくないと言う
毎日食事を準備している家族にとって、「まずい」「いらない」と言われることは大きなストレスです。
しかし、味覚や食欲だけでなく、入れ歯の不具合、口の痛み、飲み込みにくさ、便秘、体調不良などが影響していることもあります。
「せっかく作ったのに」と感情で返す前に、食べにくい理由がないか確認してみましょう。
料理を毎回作り直す必要はありません。「今日はこれとこれがあります。どちらにしますか」と選択肢を絞る方法もあります。
何度も呼ぶ・同じ要求を繰り返す
「お茶を持ってきて」「今何時?」「今日はどこへ行くの?」と何度も呼ばれると、介護者は休むことができません。
記憶の低下によって、数分前に聞いたこと自体を忘れている場合もあります。
同じ説明を何度も繰り返すだけではなく、時計や予定表を本人が見やすい位置に置いたり、飲み物を安全に取れる場所へ準備したりするなど、環境で解決できないか考えてみましょう。
暴言を言われる
「役立たず」「出ていけ」などと言われ続ければ、家族や介護職が傷つくのは当然です。
本人に不安や認知症がある場合でも、介護者が暴言を無制限に受け止め続ける必要はありません。
興奮しているときは議論を避け、いったん距離を取ります。
落ち着いた後で、「怒っていることはわかったよ。ただ、その言い方をされると私はつらい」と伝える方法もあります。
危険な要求や無理な要求をする
「一人で車を運転したい」「転倒の危険が高いのに一人で外出したい」「今すぐ遠くの店まで連れていってほしい」など、安全上そのまま受け入れられない要求もあります。
この場合は希望そのものを否定するのではなく、安全に実現できる代替案を探します。
「運転はできないけれど、明日一緒に車で行こう」「一人では心配だから、一緒に散歩しよう」のように、本人の目的を残しながら方法を変更します。
介護のわがままはどこまで聞く?3つの基準で境界線を決める
介護で迷いやすいのが、「本人の希望をどこまで聞けばよいのか」という問題です。
要求の内容を、次の3つに分けると判断しやすくなります。
| 分類 | 判断の目安 | 対応例 |
|---|---|---|
| できるだけ応じる | 安全で、介護者への負担も小さい | 好きな服を選ぶ、食事時間を少し変える |
| 代替案を出す | 希望どおりでは負担や危険がある | 一人で外出ではなく家族と外出する |
| 応じない | 本人や周囲の安全を脅かす、介護者の生活が破綻する | 危険な運転、暴力、際限のない金銭要求など |
基準1:本人の安全を守れるか
転倒、事故、誤薬、火災などにつながる可能性が高い要求は、本人が希望していても慎重な判断が必要です。
基準2:介護者の生活が維持できるか
仕事を辞めなければ対応できない、夜も眠れない、自分の通院ができないといった状況まで我慢する必要はありません。
介護は短距離走ではなく、長く続く可能性があります。
「できるかどうか」ではなく、「続けられるかどうか」で考えることが重要です。
基準3:本人の希望を別の方法で実現できないか
本人の要求には、その奥に本当の目的が隠れていることがあります。
「家に帰りたい」という言葉なら、本当に別の家へ移動したいのではなく、「ここにいると落ち着かない」「家族に会いたい」という気持ちかもしれません。
言葉だけではなく、その言葉によって何を求めているのかを見ることがポイントです。
わがままな要求をこじれにくくする伝え方
同じ内容を伝えても、言い方によって本人の反応が大きく変わることがあります。
| 避けたい伝え方 | 伝え方の例 |
|---|---|
| 「何回言えばわかるの?」 | 「もう一度一緒に確認しましょう」 |
| 「わがままばかり言わないで」 | 「何が一番嫌なのか教えてくれる?」 |
| 「絶対ダメ」 | 「それは難しいけれど、こちらならできます」 |
| 「さっき言ったでしょ」 | 「今日は3時に出かけます」 |
| 「みんな我慢している」 | 「あなたはどうしたい?」 |
まず気持ちを受け止め、その後にできることを伝える
1気持ちを確認する
「今日は行きたくないんだね」
2理由を探る
「何か嫌なことがあった?」
3できる範囲を伝える
「今日は休めないけれど、早めに帰れるか聞いてみよう」
4選べる形にする
「朝から行くのと、お昼から行くのならどちらがいい?」
「共感すること」と「要求を受け入れること」は同じではありません。
気持ちだけは受け止めながら、できないことはできないと伝えて構いません。
説明は短くする
認知機能が低下している場合、長い説明ほど理解しにくくなることがあります。
理由を10分かけて説明するより、「今日は病院の日です。10時に出ます」のように短く具体的に伝えた方がわかりやすい場合があります。
興奮しているときに結論を出そうとしない
本人が強く怒っているときは、正しい説明を重ねても伝わりにくい場合があります。
安全を確保できるなら、少し時間を置き、話題を変えたり場所を変えたりしてから再度声をかける方法もあります。
介護が「もう限界」と感じたら一人で抱え込まない
介護では、本人への対応方法だけを考えていても解決しないことがあります。
介護する人自身が疲れ切っている場合は、介護量そのものを減らす必要があります。
限界が近いサイン
- 親の声を聞くだけで強い怒りが湧く
- 眠れない日が続いている
- 介護のために仕事や自分の生活がほとんどできない
- 手を上げそうになることがある
- 「いなくなってほしい」と繰り返し考えてしまう
- 食事や介助をする気力がなくなっている
こうした状態では、「もっと優しくしよう」と自分に言い聞かせるだけでは解決しません。
人やサービスを増やし、介護者が本人と離れる時間を確保することが必要です。
暴力などで本人や介護者の安全を確保できない場合は、その場から距離を取り、家族だけで解決しようとしないことが重要です。急病やけがなど緊急性が高い場合は119番、暴力などで差し迫った危険がある場合は110番を含め、状況に応じて外部の助けを求めてください。
ケアマネジャーに相談する
すでに介護保険サービスを利用している場合は、まず担当のケアマネジャーへ相談しましょう。
「母がわがままで困っています」だけではなく、具体的に伝えることがポイントです。
- デイサービスの日になると毎回拒否する
- 夜中に5回以上呼ばれる
- 入浴時に強い拒否がある
- ここ1週間で急に怒りっぽくなった
状況が具体的であるほど、サービス内容やケア方法を検討しやすくなります。
地域包括支援センターへ相談する
介護サービスをまだ利用していない、どこに相談すればよいかわからない場合は、本人が暮らす地域の地域包括支援センターが相談先の一つです。
地域包括支援センターは、高齢者の保健・医療・介護・福祉などに関する総合相談を行っています。
認知症が疑われる場合には、状況に応じて認知症疾患医療センターや認知症初期集中支援チームなどと連携した支援につながることもあります。
突然様子が変わった場合は医療職へ相談する
急に怒るようになった、急に眠らなくなった、ぼんやりする、食事を取らなくなったなど、短期間で大きな変化がみられる場合は注意が必要です。
身体的不調や薬の影響などが隠れている可能性もあるため、かかりつけ医などの医療職へ相談しましょう。
ショートステイやデイサービスで離れる時間をつくる
家族が24時間一緒にいるほど、双方のストレスが高まる家庭もあります。
デイサービスやショートステイなどを利用し、物理的に離れる時間を確保することも介護を続ける方法の一つです。
サービスを利用することは「介護を放棄すること」ではありません。
家族だけに依存しない介護体制をつくることが、結果として在宅生活を長く続けることにつながります。
仕事を辞める前に両立支援制度を確認する
働きながら介護をしている場合、限界を感じてすぐ退職を決める前に、勤務先の制度を確認しましょう。
育児・介護休業法には、介護休業、介護休暇、短時間勤務等の措置、時間外労働の制限など、仕事と介護を両立するための制度があります。
2025年4月1日からは、介護離職防止に向けた個別の制度周知・意向確認や、利用しやすい雇用環境の整備などが事業主に義務付けられています。
介護職は利用者を「わがまま」で終わらせない
介護施設や訪問介護でも、「あの利用者さんはわがままだから」という言葉が出ることがあります。
しかし、「わがまま」という言葉だけで情報共有すると、具体的な支援方法が見えません。
行動の前後を記録する
たとえば「入浴拒否あり」と記録するだけでなく、次のように整理すると原因を探りやすくなります。
| 確認項目 | 記録例 |
|---|---|
| 直前の状況 | 昼食直後、眠そうにしていた |
| 声かけ | 「今からお風呂です」と声をかけた |
| 本人の反応 | 「今日は嫌だ」と強く拒否 |
| 対応 | 30分休憩して別職員が声をかけた |
| 結果 | 本人から「今ならいい」と話し入浴 |
こうした記録を積み重ねると、「昼食直後は拒否が強い」「特定の声かけでは不安が高まる」といったパターンが見えてくることがあります。
本人の生活歴を知る
毎日同じ時間に入浴していた人、夕食前には必ず散歩していた人、他人に身体を見られることを非常に嫌う人など、長年の生活習慣や価値観は人それぞれです。
介護者側にとって不合理に見える行動でも、本人の人生を知ると理由が見えてくる場合があります。
家族と介護職の情報を共有する
施設では穏やかでも自宅では怒る、自宅では食べないのにデイサービスでは完食するなど、場所によって行動が違うことがあります。
どちらかが間違っているわけではありません。
環境や人間関係によって反応が変わることがあるため、家族と専門職が情報を共有しながら原因を探ることが大切です。
介護のわがままについてよくある質問
年齢だけを理由に「高齢者はわがままになる」と考えることはできません。認知機能の変化、身体的不調、不安、孤独、聞こえにくさ、生活環境の変化などによって、以前とは違う言動が表れることがあります。まず背景を確認することが大切です。
認知症だから必ずわがままになるわけではありません。認知症では不安、焦り、妄想、介護への抵抗などの行動・心理症状がみられることがあり、それが周囲にはわがままのように見えることがあります。本人の性格だけで判断せず、環境や健康状態も確認しましょう。
すべて聞く必要はありません。「本人の安全」「介護者の生活」「代替方法の有無」の3点で判断すると整理しやすくなります。安全で負担の少ない希望はできるだけ尊重し、難しい場合は代替案を提示し、危険な要求には応じないという境界線を持ちましょう。
怒りを感じることだけで、介護に向いていないとは判断できません。睡眠不足や長時間の介護、仕事との両立などで負担が積み重なると、誰でも余裕を失いやすくなります。怒りが続く場合は、自分を責め続けるのではなく、介護量を減らせないかケアマネジャーなどに相談することが重要です。
まず、何を嫌がっているのかを確認します。「介護」という言葉への抵抗、知らない人を家に入れる不安、デイサービスへの誤解など理由はさまざまです。家族だけで説得が難しい場合は、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談し、第三者から説明してもらう方法もあります。
まとめ|介護の「わがまま」は背景を探りながら無理のない境界線をつくる
介護をしていると、「どうしてこんなにわがままなのだろう」と感じることがあります。
しかし、拒否、暴言、同じ要求の繰り返しなどには、認知機能の変化、不安、痛み、生活習慣、自分で決められないことへの抵抗など、さまざまな背景が隠れている可能性があります。
大切なのは、何でも「わがまま」と決めつけることでも、反対にすべての要求を受け入れることでもありません。
- まず行動の背景を考える
- 痛みや体調不良がないか確認する
- 本人が選べる場面をつくる
- できないことには代替案を提示する
- 危険な要求や無理な要求には境界線を引く
- 介護者自身の生活と健康も守る
- 限界になる前にケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談する
介護する側が疲れ切ってしまえば、本人に穏やかに接し続けることも難しくなります。
「本人にどう我慢してもらうか」だけではなく、「家族だけで抱えなくてもよい介護の形に変えられないか」という視点を持つことが重要です。
本人の尊厳と、介護する人の生活。その両方を守れる方法を探していきましょう。
参考情報:厚生労働省「認知症施策」「認知症に関する相談先」「地域包括ケアシステム」「市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について」「仕事と介護の両立」等を確認して作成。
訪問介護しんらい 
