高齢者のペットロスを支えるには|症状・注意したいサイン・家族ができること

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こんな疑問を持つ方へ
  • ペットを亡くした親が元気をなくしていて、どう声をかければいいか分からない
  • 高齢者のペットロスは、若い人より重くなりやすいの?
  • 眠れない・食べないなど、心配な変化が続いたらどこに相談すればいい?
  • 「また飼いたい」と言う親に、賛成していいのか迷っている

長年一緒に暮らした犬や猫を見送ったあと、親が急に口数が減った、外に出なくなった。そんな変化に戸惑っているご家族は少なくありません。高齢の方にとってペットは、話し相手であり、毎日の生活のリズムそのものだったことも多いものです。この記事では、高齢者のペットロスで見られる心と体の変化、気をつけたいサイン、家族ができる声かけやサポート、新しいペットを迎えるか迷ったときの考え方、相談先までをまとめました。

※研究結果・法律・相談窓口の情報は、2026年10月時点で国や自治体、研究機関の公表資料で確認した内容に基づいています。

高齢者のペットロスとは|高齢の飼い主ほど影響が大きくなりやすい理由

ペットロスとは、ペットとの死別や別れによって起こる、深い悲しみやそれに伴う心身の変化のことです。「ペットロス症候群」という言葉もよく使われますが、医学上の正式な病名ではありません。大切な家族を失ったときの、ごく自然な反応だと考えてください。

ただし高齢の方の場合、次のような事情が重なり、悲しみが深くなったり長引いたりすることがあります。

ペットが毎日の生活の中心だった

朝の散歩、決まった時間のごはん、トイレの掃除。ペットの世話は、高齢の方にとって一日の予定そのものになっていることがあります。子どもが独立し、仕事も退職したあとは、「この子のために起きる」「この子のために出かける」という役割が、生きる張り合いになっていたことも多いでしょう。ペットがいなくなると、悲しみと同時に、その日課と役割も一度に失うことになります。

ほかの「喪失」と重なりやすい

年齢を重ねると、配偶者や友人との死別、体力の衰え、仕事や地域での役割の変化など、さまざまな喪失を経験します。配偶者を亡くしたあと、ペットが一番の心の支えになっていたという方もいます。そこにペットとの別れが重なると、心の負担はより大きくなります。

「もう次は飼えない」という思い

「自分の年齢では、もう新しい子は迎えられない」と考える方は少なくありません。犬や猫の寿命は十数年に及ぶことが多いため、これは無理のない考えです。しかしそれは、ペットとの暮らしそのものが終わってしまうという、二重の喪失感につながることがあります。

悲しみを分かってもらいにくい

「たかがペットで」「もう年なんだから」と言われるのを恐れて、悲しみを口に出せない方もいます。一人暮らしの場合は、気持ちを話す相手そのものがいないこともあります。周りに理解されにくい悲しみは、心の中に閉じ込められ、長引きやすくなります。

高齢者のペットロスで見られる症状|心・体・行動に表れる変化

大切な存在を亡くしたときの悲しみ(グリーフ)は、気持ちだけでなく、体や行動にも表れます。神奈川県がグリーフケアの解説で示している反応の例を、ペットロスの場面に当てはめて整理しました。

反応の種類 主な例 ペットロスでよく聞く様子
気持ち 悲しみ、ショック、怒り、罪悪感、自責の念、後悔、孤独感 「もっと早く病院に連れて行けば」と自分を責め続ける
考え・認知 現実感がない、集中力や記憶力の低下、混乱 亡くなったことが信じられず、いつもの時間にごはんを用意してしまう
行動 引きこもる、亡くなった存在を探す、落ち着かない、飲酒や喫煙が増える 散歩コースに出かけなくなる、物音がするとペットを探してしまう
体 眠れない、食欲がない、頭痛、めまい、疲れやすい 夜中に何度も目が覚める、食事の量が目に見えて減る

※反応の例は神奈川県「グリーフケアについて」をもとに作成

こうした反応は、悲しみの中で心のバランスを取り戻そうとする過程で起こるもので、多くは時間とともに少しずつ和らいでいきます。表れ方や回復までの期間は人それぞれで、「何か月で立ち直るのが普通」という決まりはありません。命日やペットの誕生日、季節の行事などをきっかけに、悲しみがぶり返すこともあります。

高齢の方は「体の不調」として表れやすい

高齢の方は、悲しみを言葉にするより、「食欲がない」「体がだるい」「よく眠れない」といった体の不調として訴えることがあります。食事の量が減ると体力が落ち、持病が悪化したり、転びやすくなったりするおそれもあります。気持ちの面だけでなく、体の変化にも目を向けてください。

注意したいサイン|長引くペットロスと、うつや生活の乱れ

悲しみそのものは自然な反応ですが、生活に大きな支障が出るほど続く場合は、うつ状態などにつながっていることもあります。次のような様子が続くときは、早めに専門家へ相談することを考えてみてください。

家族が気づきたい変化

  • 数週間たっても、ほとんど眠れない・食べられない状態が続いている
  • 体重が目に見えて減っている
  • 身だしなみや入浴、掃除などに手がつかなくなった
  • 以前は楽しんでいた趣味や外出、人付き合いをすべてやめてしまった
  • 「自分のせいで死なせた」と強く自分を責め続けている
  • 「早くあの子のところへ行きたい」など、死を口にする
  • お酒の量が増えている
  • 物忘れが急に増えた、話のつじつまが合わないことが多くなった

散歩や世話がなくなることの影響

ペットとの暮らしは、高齢の方の体と頭を自然に動かしています。東京都健康長寿医療センターが2023年に発表した研究では、65歳以上の地域在住者約1万1千人を調べたところ、犬を飼っている人は、飼っていない人より介護が必要な認知症を発症するリスクが約4割低い傾向が見られました。研究チームは、犬の世話による運動習慣や、人との交流が関係していると考えています。2026年には、国立環境研究所などのチームも、同様の傾向を示す研究結果を発表しています。

これらは「犬を飼えば認知症にならない」と証明したものではありません。ただ、裏を返せば、ペットを亡くしたあとは散歩や人との会話が一気に減る可能性があります。ペットと一緒に失われた「体を動かす習慣」や「人と話す機会」を、別の形で取り戻すことが大切です。

大切なこと
眠れない・食べられない状態が続く、死を口にするなどの様子があるときは、ひとりで抱え込まず、かかりつけ医や心療内科・精神科に相談してください。すぐに話を聞いてほしいときは、次の電話相談も利用できます(2026年10月時点で厚生労働省のページにより確認)。
・こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(お住まいの都道府県・政令指定都市の相談窓口につながります。受付時間は地域により異なります)
・よりそいホットライン:0120-279-338(24時間)
・いのちの電話:0120-783-556(毎日16時〜21時)

うつ病で日常生活に支障がある場合に使える在宅のサービスについては、うつ病でヘルパー利用はできる?対象条件と自己負担額の目安でも紹介しています。

家族ができるサポート|ペットロスの高齢者にかける言葉と避けたい言葉

家族にできる一番のサポートは、悲しみを無理に終わらせようとせず、そばで話を聞くことです。励ましのつもりの言葉が、かえって本人を傷つけてしまうこともあります。

避けたい言葉 本人が受け取りやすい言い換え
たかがペットでしょう 本当に家族だったもんね。寂しいね
いつまでも落ち込まないで 悲しいのは当たり前だよ。無理に元気を出さなくていいよ
また新しい子を飼えばいいじゃない あの子との思い出、また聞かせてね
寿命だったんだから仕方ないよ 最後まで大事にしてもらって、あの子は幸せだったと思うよ
早く片付けたほうがいいよ 片付けは、気持ちが落ち着いてからでいいからね

話を聞くときは「評価しない」

本人が「私のせいで」と自分を責めているときは、すぐに否定するより、「そう思ってしまうくらい大切にしていたんだね」と気持ちを受け止めてみてください。同じ話を何度も繰り返すこともありますが、話すことは気持ちを整理する大切な作業です。アドバイスより、相づちと共感を心がけましょう。

家族の中の「悲しみ方の違い」を責めない

同じペットを亡くしても、すぐに泣ける人、黙り込む人、忙しくして気を紛らわす人と、悲しみ方は人それぞれです。高齢の親が長く落ち込んでいる一方で、ほかの家族は日常に戻っている、ということもよくあります。どちらが正しいということはないので、温度差があっても責め合わないことが大切です。

離れて暮らしているなら、連絡の回数を少し増やす

遠方に住んでいる場合は、ペットを亡くした直後の数か月だけでも、電話や訪問の回数を増やしてみてください。「ごはん食べた?」「よく眠れてる?」と体のことを聞くと、気持ちを打ち明けにくい方でも答えやすくなります。

伝え方の例
「最近どう?」と漠然と聞くより、「〇〇(ペットの名前)の写真、また見せてよ」「今度の週末、一緒にお墓(納骨先)に行こうか」と、ペットの話題に自然に触れるほうが、本人も悲しみを口にしやすくなります。名前を呼ぶことを避けすぎないのもポイントです。

ペットロスから少しずつ立ち直るために|お別れ・思い出・新しい日課

悲しみが「なくなる」ことを目指す必要はありません。亡くなったペットとのつながりを心の中に持ち続けながら、少しずつ日常を取り戻していくことが、回復の一つの形です。

きちんとお別れの時間をもつ

火葬や納骨、自宅での供養など、お別れの形を本人の希望に沿って決めることは、気持ちの区切りになります。ペット霊園や民間の葬儀業者のほか、自治体によっては有料で火葬などを受け付けているところもあります。方法や費用は地域で異なるので、お住まいの市区町村に確認してみてください。

亡くなったあとの手続きも家族が手伝う

犬が亡くなったときは、狂犬病予防法にもとづき、30日以内に市区町村へ死亡の届け出をする必要があります。悲しみの中では手続きまで気が回らないことも多いので、家族が代わりに窓口や届け出方法を調べてあげると安心です。

思い出を形にする

写真をアルバムやフォトフレームにまとめる、首輪や毛の一部を小さな入れ物に残す、思い出を書き留める。こうした作業は、悲しみを外に出し、気持ちを整理する助けになります。家族が一緒に写真を選びながら、思い出話をするのもよい時間になります。

「散歩の時間」をそのまま残す

犬の散歩が日課だった方は、同じ時間に同じコースを歩く習慣を続けてみるのも一つの方法です。散歩仲間と会えば、ペットの思い出を分かち合える相手にもなります。最初はつらくても、外に出て体を動かすことは、睡眠や食欲を整えることにもつながります。

気持ちを話せる場所を見つける

家族には言いにくい気持ちも、同じ経験をした人になら話せることがあります。動物病院やペット霊園、民間団体などが、ペットロスの相談会や語り合いの会を開いていることがあります。人とのつながりを広げたいときは、高齢者の茶飲み友達の見つけ方|出会える場所7選と家族ができるサポートも参考にしてください。

新しいペットを迎えるか迷ったら|高齢者が考えておきたいこと

しばらくして、本人が「また飼いたい」と言い出すこともあります。新しいペットは、生活に張り合いを取り戻すきっかけになる一方で、高齢の方ならではの心配もあります。家族も一緒に、次のような点を考えてみてください。

「最期まで飼えるか」を家族と話し合う

動物愛護管理法では、飼い主は、できる限り動物がその命を終えるまで適切に飼うよう努めなければならない、と定められています。これを「終生飼養(しゅうせいしよう)」といいます。犬や猫は十数年生きることも多いため、自分が入院したり、介護が必要になったりしたときに誰が世話をするかを、迎える前に決めておくことが大切です。

迎える前に確認したいこと

  1. 体力に合った動物を選ぶ
    毎日の長い散歩が必要な大型犬より、小型犬や猫のほうが負担は少なめです。子犬・子猫より落ち着いた成犬・成猫のほうが、世話がしやすい場合もあります。
  2. 「もしも」のときの預け先を決める
    家族・親族、知人、ペットホテルやペットシッターなど、急な入院のときに頼める先を確保しておきます。
  3. ペットの情報をまとめておく
    名前・年齢・性格・持病・かかりつけの動物病院などをメモにして、すぐに渡せるようにしておきます。
  4. 費用の見通しを立てる
    年をとったペットは医療費がかさむこともあります。年金生活の中で無理なく続けられるか、家族と確認しておきましょう。

環境省や自治体も、高齢の飼い主が入院などで世話ができなくなり、ペットの行き場がなくなるケースがあることから、こうした事前の備えを呼びかけています。

「飼う」以外の関わり方もある

飼うことが難しい場合でも、動物と触れ合う方法はあります。家族や近所のペットの散歩を手伝う、動物と触れ合える施設に出かける、動物愛護団体のボランティアに参加する、といった関わり方も考えられます。「もう二度と動物と関われない」と思い詰めないよう、いろいろな選択肢を一緒に探してみてください。

ワンポイント
ペットを亡くした直後に、悲しみを埋めるために急いで次の子を迎えると、「前の子と比べてしまう」「やはり世話が大変だった」と後悔することもあります。本人の気持ちが少し落ち着いてから、家族と一緒にゆっくり考えるのがおすすめです。

一人暮らしの高齢者のペットロス|見守りと介護サービスの活用

一人暮らしの方にとって、ペットは唯一の同居家族だったということもあります。ペットがいなくなると、家の中で声を出す機会がほとんどなくなり、生活が急に乱れることがあります。家族だけで見守るのが難しいときは、地域の力も借りましょう。

地域包括支援センターに相談する

地域包括支援センターは、高齢の方の暮らしや介護の困りごとを相談できる公的な窓口で、市区町村ごとに設けられています。「ペットを亡くしてから元気がなく、食事もとれていないようだ」と家族から相談することもできます。必要に応じて、見守りの仕組みや介護サービスの利用につないでもらえます。

すでに介護サービスを使っている場合

ケアマネジャーやホームヘルパー、デイサービスの職員に、ペットを亡くしたことを伝えておきましょう。訪問のときに様子を気にかけてもらえたり、食事や睡眠の変化に早く気づいてもらえたりします。デイサービスなど人と関わる場が、気持ちを切り替えるきっかけになることもあります。

新しい「楽しみ」を一緒に探す

ペットの世話に使っていた時間が、ぽっかりと空いてしまう方も多いものです。すぐに代わりを見つける必要はありませんが、少し落ち着いてきたら、散歩や園芸、地域の集まりなど、本人が興味を持てることを一緒に探してみてください。趣味がない状態が続いたときの心身への影響は、高齢者に趣味がないとどうなる?研究データで見る5つの変化でくわしく紹介しています。

よくある質問

Q. 高齢者のペットロスは、どれくらいで立ち直れますか?
A. 回復までの期間は人それぞれで、決まった目安はありません。数か月で日常に戻る方もいれば、1年以上かけて少しずつ気持ちが落ち着く方もいます。期間の長さより、眠れない・食べられないなど生活に支障が出る状態が続いていないかに注目してください。
Q. ペットロスで病院を受診してもいいのでしょうか?
A. はい、受診して大丈夫です。不眠や食欲不振、気分の落ち込みが続くときは、まずはかかりつけ医に相談してみてください。必要に応じて、心療内科や精神科を紹介してもらえます。「ペットのことで」とためらう必要はありません。
Q. 亡くなったペットの遺品は、すぐに片付けたほうがいいですか?
A. 無理に急ぐ必要はありません。本人の気持ちが落ち着き、「片付けよう」と思えたときで大丈夫です。すべてを処分せず、首輪や写真など一部を思い出の品として残す方も多くいます。
Q. 70代の親が子犬を飼いたいと言っています。反対すべきですか?
A. 頭ごなしに反対するより、「入院したら誰が世話をするか」「散歩を続けられるか」を一緒に考えてみてください。家族が引き取れる体制があるか、成犬や小型の犬猫を選ぶなど、条件を整えることで前向きに検討できる場合もあります。
Q. 認知症の親がペットの死を忘れて、何度も探してしまいます。
A. そのたびに「死んだでしょう」と事実を突きつけると、本人は何度も悲しみを味わうことになります。「今はお休みしているね」などと穏やかに受け止め、気持ちに寄り添う対応も一つの方法です。対応に迷うときは、主治医やケアマネジャーに相談してください。

まとめ

  • 高齢者のペットロスは、生活の日課や役割、ほかの喪失が重なるため、悲しみが深く長引きやすい
  • 悲しみは心だけでなく、不眠や食欲不振など体の不調として表れることも多い
  • 眠れない・食べられない状態が続く、死を口にするなどの様子があれば、早めにかかりつけ医や相談窓口へ
  • 家族は励ますより「話を聞く」。「たかがペット」「また飼えばいい」は避けたい言葉
  • お別れの時間をもつ、思い出を形にする、散歩の習慣を残すことが回復の助けになる
  • 新しいペットを迎えるときは、入院時の預け先など「もしも」の備えを家族と決めておく
  • 一人暮らしなら、地域包括支援センターやケアマネジャーにも見守りを頼れる

ペットを亡くした悲しみは、それだけ深い愛情を注いできた証です。無理に元気づけようとしなくても、そばで思い出話に耳を傾けてくれる家族がいることは、本人にとって大きな支えになります。まずは「あの子の話、聞かせて」と声をかけるところから始めてみてください。

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