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- 夜の介護で眠れず、仕事中にぼんやりしたりミスが増えたりしている
- 介護のために休みたいけれど、職場にどう切り出せばよいかわからない
- いっそ仕事を辞めて介護に専念したほうが楽になるのでは、と考え始めている
- 使える制度がいろいろあると聞くが、何から手をつければよいかわからない
介護疲れで仕事に集中できない、休みたいのに言い出せない。その状態が続くと、心と体だけでなく、働き方そのものが揺らいでしまいます。この記事では、仕事を続けながら介護疲れを軽くするために使える制度と相談先、そして離職を決める前に考えておきたいことを、具体的な順番で整理します。
※制度の内容は2026年10月時点の育児・介護休業法などに基づいています。勤務先の就業規則で、法律を上回る制度が用意されている場合もあります。
介護疲れで仕事がつらいのは珍しいことではありません
「自分の要領が悪いから両立できないのでは」と責めてしまう方は少なくありません。しかし、数字を見ると、仕事と介護の両立に悩む人は決して少数派ではないことがわかります。
働きながら介護をする人は約365万人
| 項目 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 仕事をしながら介護をしている人 | 約364.6万人(有業者の5.4%) | 総務省「令和4年就業構造基本調査」 |
| 過去1年間に介護・看護のために離職した人 | 約10.6万人(うち女性約8.0万人) | 総務省「令和4年就業構造基本調査」 |
| 2030年のビジネスケアラー(推計) | 約318万人(家族介護者の約4割) | 経済産業省 |
| 2030年の経済損失(推計) | 約9.1兆円 | 経済産業省 |
ビジネスケアラーとは、仕事をしながら家族の介護をしている人のことです。注目したいのは、経済産業省の推計で、約9.1兆円の損失のうち約7.9兆円が「仕事と介護の両立困難による労働生産性の低下」とされている点です。
問題は「介護で仕事を辞めること」だけではありません。辞めずに働いていても、疲れて本来の力を出せない状態が、社会全体で見ても大きな損失になっています。疲れを我慢して働き続けることは、本人にとっても職場にとっても望ましくないのです。
介護疲れの正体は「時間」と「疲労」の2種類
労働政策研究・研修機構の研究では、通院の付き添いなど日中の用事で仕事を休む「時間のやり繰り」の問題とは別に、認知症の介護ストレスや深夜の介護で体調を崩し、仕事の能率が落ちる問題があることが指摘されています。
介護疲れで仕事がつらいときは、まず自分の悩みがどちらのタイプなのかを見分けると、取るべき対策がはっきりします。
| タイプ | よくある状況 | 効きやすい対策 |
|---|---|---|
| 時間の問題 | 平日の通院付き添い、ケアマネジャーとの面談、役所の手続きが勤務時間と重なる | 介護休暇(時間単位)、時差出勤、フレックスタイム、テレワーク |
| 疲労の問題 | 夜間のトイレ介助や見守りで眠れない、帰宅後も介護が続き休む時間がない | 残業の免除、短時間勤務、ショートステイなど夜間・休日の介護サービスの追加 |
多くの場合、2つは同時に起きています。それでも、「休みを取る制度」だけでは疲労の問題は解決しにくいことを知っておくと、次の一手を選びやすくなります。
仕事に表れる介護疲れの限界サイン|早めに気づきたい変化
介護疲れは少しずつたまるため、本人が気づいたときには限界に近いことがよくあります。以下のような変化がないか、振り返ってみてください。
仕事中に表れやすいサイン
- 会議中や作業中に強い眠気がくる、居眠りしてしまう
- 以前はしなかったケアレスミスや物忘れが増えた
- 仕事中も介護のことが頭から離れず、集中できない
- 同僚の何気ない言葉にイライラする、涙が出そうになる
- 介護を理由とした遅刻・早退・欠勤が増え、職場に申し訳なさを感じている
心と体に表れやすいサイン
- 寝つけない、夜中に何度も目が覚める状態が続いている
- 食欲がない、または食べ過ぎてしまう
- 楽しみにしていたことに興味がわかない
- 介護している家族に、きつい言葉をぶつけてしまうことがある
- 「全部投げ出したい」「消えてしまいたい」と思うことがある
当てはまるものがあったら
ひとつでも当てはまる場合は、「もう少し頑張れる」ではなく「仕組みを変えるタイミング」と考えてください。眠れない、気分が落ち込む状態が2週間以上続いているときは、かかりつけ医や心療内科への相談も選択肢です。
自分や家族を傷つけてしまいそうな気持ちがあるときは、ひとりで抱えずに、すぐに医療機関や自治体の相談窓口、身近な信頼できる人に連絡してください。介護者が倒れてしまえば、介護そのものが続けられなくなります。
介護疲れで仕事を休みたいときに使える制度一覧
育児・介護休業法には、介護をしながら働く人のための制度がいくつも用意されています。勤務先に独自の規定がなくても、法律に基づいて利用できます。
まず押さえたい7つの制度
| 制度 | 内容 | こんなときに |
|---|---|---|
| 介護休暇 | 年5日(対象家族が2人以上なら年10日)。1日単位または時間単位で取得可 | 通院の付き添い、ケアマネジャーとの面談、役所の手続き |
| 介護休業 | 対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割可 | 退院後の生活の準備、施設探し、介護サービスの体制づくり |
| 所定外労働の制限 | 会社の定める労働時間を超える残業が免除される。介護が終わるまで何度でも請求可 | 帰宅後の介護に備えて定時で帰りたい |
| 時間外労働の制限 | 法定時間外労働を月24時間・年150時間以内に制限 | 残業をゼロにはできないが減らしたい |
| 深夜業の制限 | 午後10時から午前5時までの勤務が免除される | 夜勤やシフト勤務があり、夜間の介護と重なる |
| 短時間勤務等の措置 | 短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤・介護サービス費用の助成など、会社が設けた措置を利用開始から3年以上の間で2回以上使える | デイサービスの送り出しや迎えに合わせて働きたい |
| テレワーク | 介護をする労働者が選択できるようにすることが、2025年4月から会社の努力義務に | 通勤時間を介護や休息に回したい |
対象家族は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。テレワークは努力義務のため、職種や会社によっては導入されていないこともあります。
介護休暇と介護休業の違い
名前が似ているため混同されがちですが、役割ははっきり異なります。
| 比較項目 | 介護休暇 | 介護休業 |
|---|---|---|
| 休める期間 | 年5日(2人以上なら10日) | 通算93日(3回まで分割) |
| 取得単位 | 1日または時間単位 | まとまった期間 |
| 申し出 | 当日の口頭での申し出も認められる | 原則として開始予定日の2週間前までに書面などで |
| 休んだ日の収入 | 有給か無給かは会社の規定による | 条件を満たせば雇用保険から介護休業給付金 |
| 主な目的 | 日々の用事への対応 | 介護の体制をつくる準備期間 |
介護休業の93日は、自分が介護に専念するための期間ではありません。厚生労働省は、働きながら介護できる体制を整えるための期間と位置づけています。ケアマネジャーとの相談、サービスの手配、施設の見学などに充てると、復帰後の疲れ方が大きく変わります。
介護休業給付金のポイント
雇用保険に加入している人が介護休業を取ると、条件を満たせば介護休業給付金を受け取れます。
- 支給額の目安:休業開始時賃金日額×支給日数×67%(上限額あり)
- 主な条件:休業開始前の2年間に、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が12か月以上あること
- 注意点:休業中に会社から賃金の8割以上が支払われる場合や、休業後にそのまま退職する予定の場合は支給されません
- 手続き:原則として勤務先を通じてハローワークに申請します
なお、「要介護状態」とは、けがや病気、障害などにより2週間以上にわたって常時介護が必要な状態を指します。介護保険の要介護認定を受けていなくても、この状態に当てはまれば制度の対象になる場合があります。
2025年4月の法改正で会社に相談しやすくなったこと
2025年4月に施行された改正育児・介護休業法では、介護離職を防ぐための会社の義務が強化されました。働く側から見ると、「言い出しにくい」という壁が低くなったのが大きな変化です。
| 改正内容 | 会社の対応 | 働く人にとっての意味 |
|---|---|---|
| 個別の周知・意向確認 | 介護に直面したと申し出た人に、制度の内容を個別に伝え、利用の意向を確認する(義務) | 「介護が始まった」と伝えるだけで、使える制度の説明を受けられる |
| 早い段階での情報提供 | 40歳になるときなど、介護に直面する前に制度の情報を提供する(義務) | 介護が始まる前から備えられる |
| 雇用環境の整備 | 研修、相談窓口の設置、利用事例の提供、利用促進方針の周知のいずれかを行う(義務) | 社内に相談先がある可能性が高くなった |
| 介護休暇の対象拡大 | 労使協定で「勤続6か月未満」の人を除外する仕組みが廃止 | 入社したばかりでも介護休暇を取りやすくなった |
| テレワークの努力義務 | 介護をする人がテレワークを選べるよう努める | 在宅勤務を相談しやすくなった |
つまり、「介護をしています」と会社に伝えることが、制度利用のスタートラインになりました。何をどう使えばよいかわからない段階でも、まず申し出ることに意味があります。
介護疲れでも仕事を辞める前に考えたいこと
疲れが限界に近づくと、「仕事を辞めれば楽になる」と考えがちです。しかし、実際に離職した人の声からは、別の現実が見えてきます。
離職後に「負担が増えた」と感じる人が多い
40〜50代で介護を機に離職した人を対象にした厚生労働省の委託調査(平成24年度)では、離職前と比べた負担の変化について、次のような結果が出ています。
| 負担の種類 | 「負担が増した」と答えた割合 | 考えられる背景 |
|---|---|---|
| 経済面 | 74.9% | 収入がなくなり、介護費用や生活費の負担が重くなる |
| 精神面 | 64.9% | 社会とのつながりが減り、介護と向き合う時間ばかりになる |
| 肉体面 | 56.6% | 費用を抑えるために介護サービスを減らし、自分で担う量が増える |
仕事は、収入源であると同時に、介護から心理的に離れられる大切な時間でもあります。辞めることで、その逃げ場まで失ってしまう可能性があることは知っておきたいところです。
辞めるか迷ったときの判断の順番
- 今の介護サービスを見直す
ケアマネジャーに「仕事を続けたい」「夜に眠れていない」と伝え、サービスの追加や変更を相談します。 - 会社の制度を使い切る
残業免除、短時間勤務、介護休暇、テレワークなど、働き方を調整できる制度を確認します。 - 介護休業で体制を立て直す
まとまった休みを取り、施設入所の検討も含めて介護の形そのものを見直します。 - それでも難しい場合に働き方を変える
部署異動、勤務形態の変更、転職などを、収入と介護期間の見通しを立てたうえで検討します。
介護休業給付金は、職場に復帰することを前提にした制度です。退職を決めてから休業しても給付金は受け取れないため、「辞めるかどうか」の判断は、休業制度を使って介護体制を整えた後でも遅くありません。
仕事と介護を両立しながら介護疲れを軽くするコツ
制度で時間を確保するのと同じくらい大切なのが、介護そのものの負担を減らす工夫です。特に「疲労の問題」には、こちらの対策が効きます。
ケアマネジャーに勤務状況と疲れ具合を正直に伝える
ケアプランは、介護を受ける本人の状態だけでなく、家族の状況も踏まえて作られます。勤務時間、残業の有無、夜間の介護で眠れていないことなどを具体的に伝えると、働く家族に合ったプランを考えてもらいやすくなります。遠慮して「大丈夫です」と言ってしまうと、負担はそのまま残ります。
夜間・休日の負担を減らすサービスを組み合わせる
| サービス | 内容 | 軽くなる負担 |
|---|---|---|
| ショートステイ | 介護施設に短期間宿泊する | まとまった睡眠と休息を確保できる |
| デイサービス | 日中に施設で食事や入浴、機能訓練を受ける | 勤務中の見守りの不安、入浴介助の負担 |
| 訪問介護 | ホームヘルパーが自宅で介助や家事援助を行う | 出勤前・帰宅後の身体介助 |
| 介護保険外サービス | 配食、家事代行、見守りサービスなど(全額自己負担) | 食事づくりや家事全般 |
介護保険サービスの自己負担は、所得に応じて1〜3割です。また、勤務先が「介護サービス費用の助成」を短時間勤務等の措置として設けている場合もあるため、就業規則を確認してみましょう。
「自分がやらなくていいこと」を手放す
介護疲れが強い人ほど、すべてを自分で抱えていることが少なくありません。次のような視点で、役割を分け直してみてください。
- きょうだいや親族に、通院の付き添いや手続きなど「日程を決めてできること」を具体的に頼む
- 遠方の家族には、費用の分担や電話での見守りなど、離れていてもできる役割をお願いする
- 家事のうち、食事の宅配や洗濯代行で置き換えられるものは外に出す
- 週に1回でも、介護も仕事もしない「自分の時間」を予定として先に確保する
1週間でできる行動プラン
| 時期 | やること |
|---|---|
| 1〜2日目 | 就業規則で介護関連の制度を確認し、介護のスケジュールと疲れている時間帯を書き出す |
| 3〜4日目 | ケアマネジャーまたは地域包括支援センターに連絡し、サービスの見直しを相談する |
| 5〜6日目 | 上司または人事に介護の状況を伝え、使える制度について面談の場を設けてもらう |
| 7日目 | 家族と役割分担を話し合い、自分の休息日を決める |
職場への伝え方と相談先|一人で抱え込まないために
上司や人事に伝えるときのポイント
職場に介護のことを話すのは勇気がいります。伝えるときは、「迷惑をかけて申し訳ない」という謝罪よりも、「状況」と「希望」を具体的に伝えるほうが、相手も対応を考えやすくなります。
- 状況:誰を、どの程度介護しているか。介護が始まった時期と見通し
- 困っていること:通院の付き添いがある、夜間の介護で睡眠不足になっている、など
- 希望:残業の免除、時差出勤、在宅勤務など、使いたい制度や働き方
- 業務への配慮:引き継ぎや共有の方法など、自分から提案できること
「実は、父の介護が始まっています。夜間の付き添いが増えていて、しばらく残業を控えたいと考えています。会社で使える介護の制度について、一度ご相談させていただけますか」
介護休業や介護休暇などの申し出や利用を理由とした解雇、降格、不利益な評価は、法律で禁止されています。
状況別の相談先一覧
| 相談したいこと | 相談先 |
|---|---|
| 介護全般、何から始めればよいか | 地域包括支援センター(介護が必要な家族が住む市区町村に設置。相談無料) |
| 介護サービスの追加・変更 | 担当のケアマネジャー |
| 社内の制度や働き方 | 上司、人事・労務担当、社内の相談窓口 |
| 制度を使わせてもらえない、不利益な扱いを受けた | 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室) |
| 心身の不調 | かかりつけ医、心療内科、産業医、自治体の保健センター |
地域包括支援センターは、保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が相談に応じる、介護の総合相談窓口です。地域によって名称が異なる場合もあるため、わからないときは市区町村の窓口に問い合わせてみてください。
よくある質問
まとめ
介護疲れで仕事がつらいと感じたときに押さえておきたいポイントを整理します。
- 働きながら介護をしている人は約365万人。悩んでいるのはあなただけではありません
- 介護疲れには「時間の問題」と「疲労の問題」があり、それぞれ効く対策が異なります
- 介護休暇、介護休業、残業免除、短時間勤務など、法律で定められた制度は勤務先に規定がなくても利用できます
- 介護休業の93日は、自分が介護をする期間ではなく、介護体制を整えるための期間です
- 2025年4月の法改正で、介護に直面したことを伝えれば、会社から制度の説明を受けられるようになりました
- 離職後に経済面・精神面・肉体面の負担が増えたと感じる人は多く、辞める判断は制度とサービスを使い切ってからでも遅くありません
- ケアマネジャー、地域包括支援センター、職場、労働局など、相談先を複数持つことが大切です
介護は、いつ終わるか見通しを立てにくいものです。だからこそ、一人で頑張り続けるのではなく、制度とサービスと周りの人の力を借りながら、自分の生活と仕事を守る仕組みをつくっていきましょう。まずは今週、ひとつだけでも相談の電話をかけることから始めてみてください。
訪問介護しんらい 