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訪問介護の防災訓練は、施設の避難訓練をそのまま真似してもうまくいきません。職員がばらばらの場所にいて、守るべき利用者も自宅に点在しているからです。義務の中身と、訪問介護だからこそ必要な訓練の形を整理します。
こんな疑問を持つ方へ
- 訪問介護でも防災訓練は義務なのか、年に何回やればいいのか知りたい
- 事務所に集まって消火器を触るだけで、訓練として認められるのか不安
- 登録ヘルパーが多く、全員そろう時間がどうしても取れない
- 訪問中に地震が起きたら、職員と利用者のどちらを優先すべきか決まっていない
- 計画書は作ったが、いざという時に動ける自信がない
訪問介護の防災訓練は「年1回以上」が義務|まず押さえる3つの基本
義務の正体は「業務継続計画にもとづく研修と訓練」
訪問介護事業所に求められている防災の備えは、運営基準上は業務継続計画(BCP)を軸に組み立てられています。BCPとは、地震や感染症などで事業所が被害を受けても、サービスを止めない、あるいは早く再開するための行動計画のことです。
運営基準で求められているのは、大きく次の2点です。
- 感染症と自然災害、両方の業務継続計画を作成すること
- 計画にもとづく研修と訓練(シミュレーション)を定期的に実施すること
この義務は2021年度(令和3年度)の介護報酬改定で定められ、2024年3月末までの経過措置を経て、2024年4月から全面的に適用されています。
訪問系は研修・訓練ともに年1回以上
回数はサービス類型によって異なります。訪問介護は「訪問系」に該当し、研修と訓練がそれぞれ年1回以上です。
| サービス類型 | 研修 | 訓練 |
|---|---|---|
| 入所系(特養・老健など) | 年2回以上 | 年2回以上 |
| 通所系(デイサービスなど) | 年1回以上 | 年1回以上 |
| 訪問系(訪問介護など) | 年1回以上 | 年1回以上 |
ここで迷いやすいのが「自然災害と感染症で2回ずつ必要なのか」という点です。厚生労働省の委託事業として公開されているQ&Aでは、自然災害・感染症の区別なく、研修と訓練をそれぞれ、訪問系は各年1回以上実施すればよいと整理されています。ただし毎年同じ内容を繰り返すのではなく、テーマを変えて実施することが望ましいとされています。
未実施は「減算」より先に「運営基準違反」になる
2024年度(令和6年度)の介護報酬改定で、業務継続計画未策定減算が導入されました。訪問系サービスは2025年3月31日まで適用が猶予され、2025年4月1日から適用が始まっています。減算率は施設・居住系で3%、訪問介護を含むその他のサービスで1%です。
注意したいのは、この減算が「発覚した時点から」ではなく「基準を満たさない事実が生じた時点」まで遡って適用される点です。たとえば訪問介護事業所で2025年10月の運営指導によって未策定が判明した場合、2025年4月まで遡って減算の対象になります。
見落とされがちなポイント
減算の直接の対象は「計画が未策定」または「計画に従った必要な措置を講じていない」場合です。研修・訓練の未実施そのものが減算要件になるわけではありませんが、これらは運営基準上の義務であり、書類だけ整えて放置していれば運営指導で指摘される対象になります。「減算さえ避ければいい」という発想は、結果的に事業所を守りません。
施設の避難訓練とは別物|訪問介護の防災訓練が難しい3つの理由
理由1:「逃げる訓練」だけではBCPの訓練にならない
もっとも多い誤解が、消火器の使い方や避難経路の確認をすれば訓練を実施したことになる、というものです。
消防法にもとづく防災訓練は、消火・通報・避難誘導・救出救護を扱います。一方でBCPの訓練が求めているのは、その後に続く「初動対応」と「業務継続」です。避難したあとに誰が指揮を執り、誰の安否をどう確認し、少ない人手でどのサービスを続けるのか。この部分が防災訓練には含まれていません。
厚生労働省の委託事業資料でも、防災訓練とBCPの訓練は別物であると明記されています。避難訓練を実施したうえで、対策本部の設置や職員の安否確認、非常食の調理といった業務継続の要素を1つ以上加えることで、はじめてBCPの訓練として成立します。
理由2:訪問介護には避難訓練の運営基準規定がない
通所介護や介護老人福祉施設などには、運営基準の中に「非常災害対策」という条文があり、非常災害に関する具体的計画の策定と、定期的な避難・救出訓練が義務づけられています。しかし、この規定は訪問系サービス以外に適用されるもので、訪問介護の運営基準には同様の条文がありません。
つまり訪問介護にとっての「防災訓練」とは、制度上はBCPの訓練を指します。事業所が入る建物の用途や規模によっては、消防法上の消防訓練が別途必要になる場合もあるため、その点は管轄の消防署に確認するのが確実です。
理由3:職員も利用者も、同じ場所にいない
施設であれば、発災時に職員と利用者が同じ建物にいます。訪問介護は違います。ヘルパーは移動中か利用者宅におり、利用者は自宅で一人という状況も珍しくありません。
| 項目 | 施設・通所系 | 訪問介護 |
|---|---|---|
| 発災時の職員の居場所 | 施設内に集中 | 移動中・利用者宅に分散 |
| 利用者の所在 | 施設内で把握済み | 自宅・避難所など不明になりやすい |
| 訓練の主役 | 避難誘導と初期対応 | 安否確認と業務の優先順位づけ |
| 備蓄の考え方 | 入所者+職員分 | まずは出勤する職員分 |
| 判断の担い手 | その場の管理者 | 連絡が取れない中で各自が判断 |
訪問介護の訓練が目指すべきは、全員がそろった状態での整然とした避難ではなく、ばらばらの場所にいる職員が、連絡手段が限られた中でそれぞれ判断できる状態をつくることです。
訪問介護の防災訓練は何をする?6つの訓練タイプと選び方
BCPの訓練には複数の型があり、事業所の規模や人員に応じて組み合わせられます。
| 訓練の種類 | 内容 | 訪問介護での取り組みやすさ |
|---|---|---|
| 机上訓練 | 発災から復旧までの流れを机上でたどる | 取り組みやすい。まずここから |
| 安否確認訓練 | 職員や利用者の安否を実際に確認してみる | 取り組みやすい。実効性が高い |
| 参集訓練 | 夜間・休日を想定し、対策本部メンバーが事業所へ集まる | 対象を絞れば実施可能 |
| 対策本部設置訓練 | 災害を想定して本部を設営し役割を確認 | 机上訓練と同時に実施しやすい |
| 実働訓練 | 機器の操作などをマニュアルどおり実際に行う | 参加人数を限定して実施 |
| 総合訓練 | 地域や他事業所と協力して一連の流れを確認 | 難度は高いが効果が大きい |
小規模事業所は「机上訓練+安否確認訓練」から
人員が限られる事業所で最初に取り組むなら、机上訓練と安否確認訓練の組み合わせが現実的です。机上訓練は、範囲を「初動対応だけ」などに絞り、進行役が内容を十分に理解していれば、1時間程度でも実施できるとされています。週1回のカンファレンスの時間を使う形でも成立します。
訓練は「正常性バイアス」と戦うために行う
厚生労働省の研修資料では、ショッピングモールで非常ベルが鳴ったとき、8割から9割の人が避難しないというデータが紹介されています。予想外の事態が起きたとき、状況を過小評価してしまう心の働きを正常性バイアスと呼びます。
訓練の本当の目的は、手順を暗記することではなく、災害が起きた状況を疑似体験して、この心理的なブレーキを外しておくことにあります。
そのまま使える机上訓練シナリオ|訪問中に震度7が起きたら
まず「前提条件」を細かく置く
机上訓練は、設定が曖昧だと議論が散らかります。厚生労働省の訪問系向け資料では、次のような前提が示されています。
- 震度7の地震が15時に発生
- 参加者は事業所の責任者で、利用者宅へ訪問中
- 津波と火災は発生しない
- 停電と断水が発生
- 電話とデータ通信が錯綜して使えない
- 道路の状況は不明
「電話が使えない」という一文を入れるかどうかで、議論の中身は大きく変わります。最初から全員が連絡を取れる前提にしてしまうと、訓練になりません。
10ステップの進行例
進行役が1ステップずつ状況を読み上げ、参加者が「自分なら何をするか」を考えて発表します。答えが出ない項目は、そこが計画の穴です。
| 区分 | タイミング | 起きること | 問いかけの例 |
|---|---|---|---|
| 防災 | 15時 | 地震発生 | 身の安全、特に頭をどう守るか |
| 防災 | 15時 | 訪問中の利用者の安全確保・安否確認 | 台所での介助中だったら。移動中だったら |
| 防災 | 15時 | 利用者が負傷 | 救急箱はどこにあるか。応急処置はできるか |
| 初動対応 | 直後 | 利用者宅の被災状況確認 | 危険箇所は。火災は。避難は必要か |
| 初動対応 | 直後 | 災害状況の確認 | 所在地の震度をどう把握するか。何を基準に継続・中止を決めるか |
| 初動対応 | 夜 | BCP発動と職員の安否確認 | 誰が発動を決めるか。事務所以外からでも安否確認を始められるか |
| 業務継続 | 翌日 | 人員確保 | 利用者と職員の日程調整ができるか |
| 業務継続 | 翌日 | 物資確保 | 簡易トイレ、水と食料、車の燃料は足りるか |
| 業務継続 | 翌日 | 利用者の安否確認 | 連絡がつかない人をどう探すか。結果を誰に伝えるか |
| 業務継続 | 翌日以降 | 業務の継続・休業・再開 | 少ない職員で何を残し、何を止めるか |
議論が止まったときに効く3つの問い
実際にやってみると、序盤で沈黙が生まれやすい場面があります。そこで次の問いを投げると動き出します。
- 「発災が夜間や休日だったら、誰が最初に動きますか」 管理者が不在という前提を足すだけで、代理者の指名が決まっていないことに気づけます。
- 「自分の家族の安否が分からないとき、どうしますか」 厚生労働省のQ&Aでも、家族の安否が簡単に確認できるなら利用者より先に確認してよいと整理されています。ここを職員に伝えておくだけで、職員は落ち着いて動けます。
- 「誰も出勤できない場合は、どうしますか」 職員がまったく動けない可能性も想定に入れ、利用者へのサービスを他事業所へどう引き継ぐかを、平時からケアマネジャーと相談しておくことが勧められています。
訓練中に答えが出なかった項目は、その場で無理に結論を出さず、記録に残して振り返りで扱います。「決まっていないことが分かった」という結果自体が、訓練の成果です。
訓練を「やりっぱなし」にしない記録と振り返り
4つの評価軸で振り返る
訓練の評価は感想で終わらせず、次の4項目で整理すると改善点が具体化します。
| 評価項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 達成度 | 期待された行動を取れたか |
| 迅速性 | 対応にどれくらい時間がかかったか |
| 正確性 | 与えられた状況を正確に整理できたか |
| 柔軟性 | いくつの対応策を検討できたか |
記録に残す項目
研修・訓練の実施報告そのものに義務はありませんが、実施した記録の保管は必要です。様式に決まりはないため、次の項目を押さえた1枚にまとめれば十分機能します。
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 実施日時・場所 | 事業所会議室、90分 |
| 対象(自然災害/感染症) | 自然災害(地震) |
| 訓練の種類 | 机上訓練(初動対応まで) |
| 参加者 | 常勤3名、登録ヘルパー4名、欠席者への共有方法も記載 |
| シナリオ・前提条件 | 15時、震度7、訪問中、通信不通 |
| 出た課題 | 夜間の発動権限者が未定、備蓄が事務所分のみ |
| 評価 | 4項目での所感 |
| BCPの修正点と期限 | 様式1に代理者を追記、翌月末まで |
最後にBCPを1行でも書き換える
BCPは作成して完成するものではなく、研修・訓練のたびに点検して是正し、計画を更新していく運用が前提になっています。訓練の締めくくりに「今回の結果でBCPのどこを直すか」を1つ決めて、その場で担当者と期限まで書き込んでしまうと、更新が後回しになりません。
訓練の前に整えたい3つの備え|安否確認・備蓄・地域連携
安否確認は「電話がつながらない前提」で複数用意する
災害時は被災地への通話が集中し、電話がつながりにくくなります。そのため連絡手段は複数持っておく必要があります。
選択肢として挙げられるのが、ショートメッセージサービス(SMS)と、NTT東日本・西日本が提供する災害用伝言ダイヤル(171)、災害用伝言板(web171)です。SMSは携帯電話やスマートフォンで標準的に使えるため、アプリの操作に不慣れな職員がいる事業所でも運用しやすい手段です。
171とweb171には体験利用できる期間が設けられており、次の日程で試せます。
| 体験利用できる期間 | 時間帯 |
|---|---|
| 毎月1日・15日 | 0時から24時 |
| 正月三が日(1月1日から1月3日) | 1月1日0時から1月3日24時 |
| 防災とボランティア週間(1月15日から1月21日) | 1月15日9時から1月21日17時 |
| 防災週間(8月30日から9月5日) | 8月30日9時から9月5日17時 |
毎月1日と15日が使えるので、安否確認訓練の日程はここに合わせるのが合理的です。使い方を書いた携帯カードを職員に配っておくと、実際の場面で迷いません。
備蓄は「出勤する職員の分」から考える
訪問介護の備蓄で混乱しやすいのが、在宅の利用者全員分の食料を用意すべきなのか、という点です。厚生労働省の委託事業Q&Aでは、備蓄の考え方はサービス類型によって異なり、訪問系は職員(出勤者分)が基準とされています。
職員には自宅での備蓄を依頼する方法もありますが、自宅の備蓄が尽きて避難所へ移ってしまうと出勤できなくなります。出勤者を確保するという観点から、事業所側にも職員用の備蓄を少し持っておくことが勧められています。食料は缶詰やゼリーなど火を使わずに食べられるものを選び、日常的に消費しながら買い足すローリングストックにすれば、専用の保管場所も不要です。
ケアマネジャー・自治体・個別避難計画とつなぐ
訪問介護だけで利用者の安全は守りきれません。安否確認の結果をケアマネジャーへ連絡する流れを事前に決めておくこと、そして電話が通じない場合に備えてメールやSNSでの連絡方法も相互に共有しておくことが重要です。
地域の仕組みとしては、2013年(平成25年)の災害対策基本法改正で避難行動要支援者名簿の作成が市町村の義務となり、2021年(令和3年)5月の改正では、名簿に載っている一人ひとりについて個別避難計画を作成することが市町村の努力義務とされました。個別避難計画には、誰が支援し、どこへ避難し、どんな配慮が必要かが記載されます。
担当する利用者に個別避難計画が作成されているなら、それと連動した避難・安否確認の形にしてかまいません。計画の作成には利用者をよく知るケアマネジャーなどの福祉専門職の関与が想定されており、訪問介護の現場が持つ情報も役に立ちます。自事業所の利用者に計画があるかどうかを確認するところから始めてみてください。
人が集まらない事業所でも回せる訓練の工夫
全員そろわなくても実施できる
登録ヘルパーが多く、全員が一堂に会する時間を確保できない事業所は少なくありません。この点についても、現実的な進め方が示されています。
- 研修 各自が資料や動画を視聴する形でも実施できます。記録を残せば要件を満たします。
- 机上訓練 対策本部の主要メンバー(各班の正副どちらか)がある程度参加していれば成立します。全員参加は必須ではありません。
- 実働訓練 実際に動く職員の人数を限定して実施できます。
- 合同実施 同一事業所内や法人内の他サービスと合同で実施してもかまいません。ただし優先業務はサービスごとに異なるため、共通化できる部分とできない部分を分けて考える必要があります。
欠席した職員への共有方法まで記録に書いておくと、実施の実質が担保されます。
年間スケジュールに落とし込む
「年1回以上」は、裏を返せば年度末に慌てやすい義務でもあります。あらかじめカレンダーに置いてしまうのが確実です。
| 時期 | 実施内容 | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
| 4月から5月 | 新規採用者向けの研修、BCPと連絡網の読み合わせ | 30分 |
| 6月 | ハザードマップの確認、水害を想定した机上訓練 | 60分 |
| 8月30日から9月5日 | 防災週間に合わせた安否確認訓練(171の体験利用) | 30分 |
| 10月から11月 | 地震を想定した机上訓練(訪問中に震度7) | 90分 |
| 1月 | 感染症をテーマにした研修・訓練 | 60分 |
| 2月から3月 | 1年分の記録をもとにBCPを見直し、翌年度の計画を作成 | 60分 |
このうち年1回分を確実に実施すれば義務は満たせます。余裕があれば複数回に広げるという考え方で、無理のない範囲から始めてください。
よくある質問
Q1. 避難訓練を実施すれば、BCPの訓練として認められますか。
避難訓練だけでは不十分とされています。消防法や水防法にもとづく訓練は避難や初期消火が中心で、BCPが求める初動対応や業務継続の要素が含まれていないためです。避難したあとに対策本部を設置する、職員の安否を確認する、といった業務継続の要素を1つ以上加えて実施してください。防災訓練のあとにBCPの訓練を追加する形でも問題ありません。
Q2. 訓練は自然災害と感染症で、それぞれ年1回ずつ必要ですか。
訪問系は、自然災害・感染症の区別なく、研修と訓練をそれぞれ年1回以上実施すればよいと整理されています。訓練の内容に細かい条件はなく、机上訓練1回でも要件を満たします。ただし研修・訓練すべき内容は多岐にわたるため、毎年テーマを変えて実施することが望ましいとされています。
Q3. 訓練の実施結果を行政に報告する必要はありますか。
研修・訓練の実施報告に関する義務はありません。ただし実施が義務づけられている以上、実施した記録の保管は必要です。様式に決まりはないので、日時・参加者・内容・出た課題・改善点を残せる1枚を用意しておけば十分です。
Q4. 訪問中に災害が起きたとき、職員と利用者のどちらを優先すべきという決まりはありますか。
利用者を最優先にしなければならないという一律の決まりは示されていません。示されているのは、職員の安全を優先に考えたうえで、何が起きたらどう対応するのかを事業所内で話し合っておく、という考え方です。地震で火災が発生した場合は初期消火を考えるなど、具体的な場面ごとに事業所としての方針を決め、訓練で共有しておいてください。
Q5. BCPを策定していない場合、どのくらい減算されますか。
訪問介護を含むその他のサービスでは所定単位数の1%、施設・居住系サービスでは3%が減算されます。訪問系サービスへの適用は2025年4月1日から始まっています。減算とならないためには計画の策定と必要な措置に加えて、指定権者への体制届の提出も必要です。届出がない場合は減算型として扱われるおそれがあるため、自事業所の届出状況を確認しておくことをおすすめします。
まとめ
- 訪問介護に求められる防災訓練は、業務継続計画(BCP)にもとづく訓練です。訪問系は研修・訓練ともに年1回以上が運営基準上の義務です。
- 消防法の防災訓練とBCPの訓練は別物です。避難や初期消火だけでなく、対策本部の設置や安否確認といった業務継続の要素を必ず加えてください。
- 訪問介護は通所系・施設系と違い、運営基準に非常災害対策(避難・救出訓練)の規定がありません。だからこそ訓練の中身は自分たちで設計する必要があります。
- 小規模事業所は机上訓練と安否確認訓練から始めるのが現実的です。机上訓練は範囲を絞れば1時間程度でも実施できます。
- 訓練のシナリオは「15時・震度7・訪問中・通信不通」のように前提を具体的に置くと、議論が深まります。
- 振り返りは達成度・迅速性・正確性・柔軟性の4軸で行い、最後に必ずBCPの修正点を1つ決めてください。
- 安否確認は電話以外の手段を複数用意します。災害用伝言ダイヤル(171)は毎月1日・15日に体験利用できるため、訓練日程を合わせると効率的です。
- 備蓄は出勤する職員の分から。利用者の避難については、市町村が作成する個別避難計画との連動を確認しておくと安心です。
- 2025年4月から訪問系サービスにも業務継続計画未策定減算(1%)が適用されています。減算は基準を満たさなくなった時点まで遡って適用される点に注意が必要です。
訓練の目的は、書類をそろえることではなく、連絡が取れない状況でも職員一人ひとりが判断できる状態をつくることです。まずは次のカンファレンスの30分を使って、「夜に大きな地震が起きたら、最初に誰が何をしますか」と問いかけてみてください。そこで出てきた沈黙こそが、事業所にとって最初に埋めるべき穴です。
訪問介護しんらい 
