介護保険制度とは

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私たちの社会は急速に高齢化しており、それに伴い、高齢者の日常生活を支える介護の需要が増加しています。しかし、介護は精神的、肉体的、そして経済的にも大きな負担となります。そんな中で、私たちの生活を支える大切な柱の一つが「介護保険制度」です。

この制度は、高齢者やその家族が直面する介護の問題に対して、社会全体で支え合うためのしくみです。しかし、多くの人々がこの制度の詳細や、利用方法について十分に理解しているとはいえません。

この記事では、介護保険制度がどのようなものなのか、基本的な仕組みやサービス内容、そして利用するための手続きについてわかりやすく解説します。

また、最新の改正情報や、実際に介護保険を利用している人々の体験談も交えながら、この制度を最大限に活用できるようお伝えしていきます。

高齢者の尊厳と自立を支え、家族の負担を軽減するために設けられた介護保険制度。この制度を深く理解し、必要な時に適切に活用できるようになることが、私達や愛する家族にとって、どれほど重要かを、心に届く第一歩となれば幸いです。

介護保険制度とは?

介護保険制度とは、介護を必要とする方に費用を給付し、適切なサービスを受けられるようにサポートする保険制度です。

介護保険制度の基本

介護保険制度は2000年(平成12)からスタートした制度で、40歳になるとすべての国民が介護保険に加入し保険料を負担するという仕組みになっています。

そして市町村の区域内に住所を有する65歳以上、または40歳以上65歳未満の医療保険加入者で特定疾病の方を対象に、市町村が実施主体となり、適切な公費負担を組み入れた社会保険方式の制度が利用できます。

その制度を利用することで、専門の介護サービスを受けることができ、介護を必要とする方々が安心して日々の生活を送れるようになるということです。

目的

自立支援その能力に応じて自立した日常生活が送れるようにすること
尊厳の保持要介護者などの人格を尊重し、その者のために忠実に職務を遂行しなければならない

背景

高齢化社会の到来日本は世界に類を見ないスピードで高齢化が進んでおり、それに伴い高齢者の福祉や医療、介護の需要が増大した
家族構造の変化核家族化や女性の社会進出などにより、従来のように家族だけで介護を担うことが困難になってきた
介護に関する社会的責任の明確化高齢者の尊厳と自立を支援するとともに、国としての社会保障制度を整備する必要が生じた
経済的負担の公平性老後の不安を減らし、若い世代と高齢者との間で経済的な負担を公平に分かち合うことが求められた。
医療費の増大抑制高齢者が医療機関に依存することなく、適切な介護サービスを受けられる体制を整えることで、医療費の増大を抑える効果も期待されている

対象者: 誰が利用できる?

  • 65歳以上の方:全ての方(第1号被保険者)
  • 40歳以上65歳未満の方:特定の疾病を持つ医療保険加入者(第2号被保険者)

特定疾病とは
ア)がん(医師が回復の見込みがないと判断したものに限る)
イ)関節リウマチ
ウ)筋萎縮性側索硬化症
エ)後縦靭帯骨化症
オ)骨折を伴う骨粗鬆症
カ)初老期における認知症
キ)進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
ク)脊髄小脳変性症
ケ)脊柱管狭窄症
コ)早老症
サ)多系統萎縮症
シ)糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
ス)脳血管疾患
セ)閉塞性動脈硬化症
ソ)慢性閉塞性肺疾患
タ)両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

介護保険の種類とサービス

居宅サービス

在宅介護サービスは、自宅での生活を支えるためのサービスです。

  • 訪問介護:介護福祉士やホームヘルパーが利用者の自宅を訪問し、身体介護や生活援助、通院時の外出移動など日常生活のサポートを行います。
  • 訪問入浴介護:専門の事業者が浴槽を利用者の自宅に持ち込み入浴の介助を行います(主に介護職員2名、看護師1名)
  • 訪問リハビリテーション:理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が利用者の自宅を訪問し、心身の機能の維持、回復、日常生活の自立を支援を行います。
  • 訪問看護:看護師、保健師、理学療法士などが利用者の自宅を訪問し、主治医の指示のもと健康管理や医療的ケアを行います。
  • 通所介護(デイサービス):施設による送迎にて、食事の介助、排せつ、入浴、機能訓練、体操などのリクレーションを日帰りで行います。
  • 居宅療養管理指導:医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士、歯科衛生士などが利用者の自宅を訪問し、療養上の管理及び指導を行い療養生活の向上を図ります。
  • 短期入所生活介護(ショートステイ):家族の負担軽減など様々な事情で自宅による介護ができない時に、短期間宿泊で看護、医学的管理の下における介護や日常生活上の世話、機能訓練などを行います。
  • 短期入所療養介護:在宅の要介護者を老人保健施設等に短期入所させて療養を行います。
  • 通所リハビリテーション:老人保健施設等で行われる日帰りのリハビリテーションを行います。
  • 特定施設入居者生活介護:有料老人ホーム等の特定施設に入居している要介護者に介護を行います。
  • 福祉用具:在宅の要介護者に対して福祉用具の貸与を行います。
  • 特定福祉用具販売:在宅の要介護者に対して排せつ用など特定用具を販売します。

施設サービス

施設介護サービスは、専用の施設で24時間体制でのケアを受けられるサービスです。

  • 特別養護老人ホーム:常時介護を必要とする、在宅での生活が困難な高齢者に対して、食事の介助、入浴、排せつ、機能訓練、療養上の世話など生活全般の介護を行う施設です。
  • 介護老人保健施設:在宅復帰を目指している要介護者に、可能な限り自立した生活を送ることができるよう理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが行うリハビリテーションがメインとなる施設です。

選び方のポイント

  • ニーズの確認:どのようなサポートが必要か、選ぶ上で何を大切にしているかなど、具体的にリストアップしてみる
  • 情報収集:利用可能なサービスや施設の情報を広く収集する
  • 相談:市町村、社会福祉協議会、地域包括支援センター、医療機関での相談など

サービス利用の流れ

  • 要介護認定の申請:介護保険サービスを受けるために必要な手続き
  • ケアプランの作成:ケースマネージャーと一緒に、居宅介護サービス計画(ケアプラン)を作成
  • サービスの開始:計画に基づき、サービスが開始される

自身の状況やニーズに合ったサービスの種類を選び、より質の高い介護生活を送りましょう。

介護保険制度の利用方法

要介護認定の申請

  • 申請:住んでいる市区町村の窓口で申請
  • 認定調査:市の職員が訪問し、身心や生活状況を調査(一次判定)
  • 主治医の意見書:市区町村は主治医に意見書を求める(一次判定)
  • 介護認定審査会:認定調査の結果と医師の意見書に基づき、保健、医療、福祉の専門家が審査を行う(二次判定)
  • 認定:要介護1~5(介護サービスを利用)
  • 認定結果の通知:原則として申請から30日以内に、市区町村が認定結果を通知

要介護認定が下りたらケアプランの作成

  • 介護事業所(訪問介護事業所)を探す:介護サービスを提供(合わない場合は変えることも可能)
  • ケアマネージャー(居宅介護支援事業所)を探す:介護事業所がサービスを提供するに当たり、ケアプラン(居宅介護サービス計画)を作成(合わない場合は変えることも可能)

各自治体の介護保険課でハートページ(無料)の請求、またはWebで「ハートページナビ」を検索すると介護サービス事業者リスト,介護保険情報などを確認することができます。

サービスの利用開始

  • 契約:選んだ事業者(居宅介護支援事業所、訪問介護事業所など)と契約を結ぶ
  • サービス提供:ケアマネージャーの作成したケアプラ、に基づいて介護サービスの利用が開始される

定期的な見直し

  • 観察:サービス内容や提供方法による利用者の変化の有無などが継続的に確認される
  • 更新:必要時、または定期的にケアプランが見直される

これら流れをスムーズに進めるためには、事前に必要な情報を集めておくことが大切です。また、介護認定が下りた後は、関係者すべての人とのコミュニケーションを大事にし、利用者本人の意向を取り入れながら「利用者の日常生活の質」を高めていきましょう。

利用者の体験談や声

利用者やその家族から、介護保険制度に関し多くの質問や体験談が寄せられます。ここでは、いくつかの体験談をご紹介します。

山田さん76歳
山田さん76歳

介護サービスに感謝
膝の手術後、歩行が困難になりましたが、介護保険のおかげで在宅リハビリを受けられました。週に数回訪問してくれる理学療法士のおかげで、自宅での生活がずいぶん楽になりました。

伊藤さん家族
伊藤さん家族

ケアマネージャーのサポート
母が要介護3の認定を受けた時、私たち家族は何をどうすればいいのか途方に暮れていました。ケアマネージャーの方がきちんとプランを立ててくれて、どのサービスを利用すればいいのかを教えてくれたのは大きな助けになりました。

 鈴木さん82歳
鈴木さん82歳

グループホームでの新生活
夫が亡くなった後、一人での生活が不安になりグループホームに入居しました。自己負担はありますが、同年代の方々との交流や様々な活動があり、心強いです。この制度がなければ、こんなに安心して生活できなかったでしょう。

佐々木さん家族
佐々木さん家族

認知症の父と家族の絆
父が認知症を発症してから、家族の負担は想像以上でした。デイサービスを利用するようになってからは、父も私たちもほっとする時間が持てるようになり、家族の絆が深まったように思います。

中村さん70歳
中村さん70歳

介護費用の不安を解消
高額な介護サービスの費用が心配でしたが、介護保険制度のおかげで、自己負担が軽減され、経済的な不安が少なくなりました。

トラブル回避のためのアドバイス

介護保険制度は高齢者の方々の生活を支える大きな柱の一つですが、その利用にあたっては注意が必要です。下記を参考に、安心した介護生活を送るための準備をしましょう。

  • 早期に介護認定を申請する:介護が必要になった時点で早めに介護認定を申請しましょう。認定を受けるまでには時間がかかる場合があり、急を要する場合に備えて余裕をもって行動することが大切です。
  • ケアマネージャーとの良好な関係構築:ケアマネージャーは介護サービスのプランを立てる重要なパートナーです。定期的にコミュニケーションを取り、相互の信頼関係を築くことがトラブルを避ける鍵となります
  • 介護サービス事業所選びは慎重に:サービスを提供する事業所を選ぶ際は、複数の事業所を比較したり、口コミや利用者の評判を参考にしたりして選択しましょう
  • 自己負担金とサービス内容の確認:利用するサービスの自己負担額を把握し、予算内で計画を立てることが重要です。また、サービス内容を十分に理解しておくことで、後になっての誤解やトラブルを防ぎます
  • 定期的な介護プランの見直し:利用者の状況や状態に変化が生じた場合は、ケアマネージャーに連絡し必要に応じてケアプランの調整を受けることで、問題が生じるのを防ぎます
  • 権利と義務の理解:利用者としての権利(適切な介護サービスを受ける権利、サービス事業者を選択する権利、プライバシーの尊重と情報の保護を受ける権利など)に併せて、利用者としての義務(利用者負担金を支払う義務、正確な情報を提供する義務、介護サービスの適切な利用など)についても正しく理解しながらサービスを受けることでことでトラブルを避けることができます
  • 書類は丁寧に管理:介護サービスに関わるすべての書類は、トラブルが生じた際の証拠となることもあるため、丁寧に管理しましょう
  • トラブル発生時の相談体制を把握:万が一のトラブルに備え、介護保険制度に関する相談窓口や支援機関を事前に把握しておくと安心です

よくある質問(FAQ)

要介護認定の申請はどこで行うのですか?
要介護認定の申請は、住んでいる市区町村の窓口で行うことができます。
介護保険の自己負担額はいくらですか?
多くの方は1割ですが、(一人暮らしの方の場合)合計所得280~340万円の第一号被保険者は2割、340万円以上の第一号被保険者は3割です。第二号被保険者は、従来どおり1割のままとなります。
また夫婦の場合は「年金収入」+「他の所得額」の合計が年間346万円以上は2割、463万円以上は3割となります。
居宅介護と施設介護の違いは何ですか?
居宅介護は自宅での生活を支えるサービスであり、施設介護は介護施設での生活をサポートするサービスです。
また、施設に入っていても、そこが居宅とみなされる場合は、居宅介護ということになります。
ケアプランを作成するためには何が必要ですか?
ケアプラン作成のためには、利用者本人や家族がケアマネージャーと協力して利用者のニーズに合わせた計画を立てる必要があります。
介護保険制度のサービスを変更したい場合、どうすればいいですか?
サービスの変更を希望する場合は、まずケアマネージャーに変更したい理由などを相談されてください。
ケアマネージャーに相談できない内容の場合は、市町村の介護保険課に問い合わせてみてください。

介護保険制度の展望

介護保険制度の今後の展望は、日本の高齢化社会を支える重要な柱として、さらにその役割を強化していくことが期待されています。これらの展望は、高齢者だけでなく、介護を担う人々や社会全体にとって、より良い将来を構築するための指針となるでしょう。

今後の展望として、以下のポイントが特に注目されています。

  • 継続的なシステムの見直しと改善:介護保険制度は、利用者のニーズや社会経済的な状況の変化に応じて継続的に見直されることが予想されます。特に、制度の持続可能性と公平性を保つための財源確保や保険料の再調整が重要な課題となります。
  • テクノロジーの積極的な活用:AI、ロボティクス、IoTなどの先端テクノロジーの介護分野への適用が進むことで、サービスの質の向上と効率化が期待されます。これにより、介護職員の負担軽減や、在宅介護の充実が進むと考えられます。
  • 予防と地域社会の統合:介護予防と地域包括ケアシステムの一層の充実が重要です。地域社会との連携を深め、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせる体制の構築が進むでしょう。
  • 国際協力と人材交流の拡大:介護人材の不足は深刻な問題です。国際協力による外国人介護人材の積極的な受け入れや、国内外の人材交流を通じたスキルアップが期待されます。
  • 家族介護者への支援強化:家族が担う介護の重負担を軽減するための支援策が強化される可能性があります。これには、心理的・経済的サポートの充実や、家族介護者向けの教育プログラムの拡充が含まれます。
  • 介護サービスの個別化と多様化:高齢者一人ひとりのニーズなどが情報共有され、それに合ったケアサービスの提供が求められます。サービスの多様化により、利用者の生活習慣や希望に合ったケアを提供することが可能になります。
  • 社会全体での介護意識の高揚:高齢者への理解を深め、介護に対する社会全体の意識を高めることが重要です。学校教育や公共キャンペーンを通じて、介護に関する知識や理解を広め、より多くの人々が介護に参加しやすい環境を作ることが求められます。

最新の改正点

介護保険制度は、高齢化社会が進む中で、今後も多くの人々にとって重要な存在となります。しかし、制度自体も進化と改善が求められています。この項目では、介護保険制度の最新の改正点について考察していきます。

  1. 自己負担割合の見直し
    • 政策によっては、利用者の所得に応じた自己負担割合の見直しが行われることがあります。これは、より公平な負担分配を目指すもので、所得が高い利用者はより多く自己負担する形になる可能性があります。
  2. サービスの質の向上
    • サービス提供者に対する評価制度の導入や、サービスの質を保つための基準の厳格化などが行われることがあります。これにより、利用者は更に良質なサービスを受けられるようになることが期待されます。
  3. 新たなサービスの導入
    • 例えば、地域密着型サービスの拡充や、特定の疾患に特化した介護サービスなど、新たなサービスのカテゴリーが導入されるとします。これにより、多様化する利用者のニーズに対応しようとする動きがみられます。

新しい制度の動向

  1. 地域包括ケアシステムの推進
    • 社会保障・税一体改革では、医療介護総合推進法では、2025年を目標とした医療・介護サービス保障の強化として、サービスの数値目標を示し、介護分野では地域包括支援センター・ケアマネージャー(介護支援専門員)、医療分野では在宅医療連携拠点を中心とする包括的マネジメントの実現を掲げています。
      医療介護総合確保推進法では、「地域包括ケアシステム」について、「地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防(要介護状態若しくは要支援状態となることの予防又は要介護状態若しくは要支援状態の軽減若しくは悪化の防止をいう)、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制」をいう(第2条)と定めています。これにより、在宅介護のサポート体制がさらに充実することが期待されます。
  2. テクノロジーを活用したサービスの開発
    • ICT(情報通信技術)AI(人工知能)ロボット技術を活用した介護サービスの開発が進められています。これらの技術は、効率的なケアの提供や、介護負担の軽減に大きな役割を果たすと考えられています。
  3. 予防・日常生活支援総合事業の展開
    • 介護予防の重要性が高まる中、日常生活を支援し、介護が必要になるリスクを下げるための事業が注目されています。これには運動プログラムや栄養管理のサポートなどが含まれます。

介護予防とは、要介護状態や要支援になることの予防、軽減、悪化防止をいう。

まとめ

介護保険制度は、私たち自身や家族が将来直面する可能性のある、介護の問題に対する支援を提供する重要な制度です。

制度を適切に利用するためには、まずその仕組みを正しく理解する必要があります。そして、自身の状況に合わせて、どのようにサービスを利用すれば良いのかを考え、計画を立てることが重要です。

また、介護保険制度も常に変化や進化を続けています。新しいサービスの提供や制度の改善が行われる可能性もあるため、最新の情報を常にチェックしておく必要があります。

介護は個人の問題だけでなく、社会全体の問題でもあります。互いに助け合い、支え合う心の準備も忘れずに、賢く介護保険制度を活用していきましょう。


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